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河村勇輝でも八村塁でもなく…フランス戦“数字で見る”最大の功労者は?「クラブでは控え」だった26歳・吉井裕鷹は代表の救世主になれるか
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKaoru Watabe/JMPA
posted2024/08/02 17:03
タイトなディフェンスで五輪でもチームに貢献している吉井裕鷹。随所に活躍が光るが前所属のアルバルクでは「控え選手」だった
年代別の日本代表に選ばれることはあったものの、大学でもメインストリームである関東のリーグではなく、大阪学院大学でプレーしていた。あくまでも王道を進む選手たちを「脅かす」立場で戦い続ける存在だった。
では、彼が日本代表に欠かせない選手になれたのは何故なのか。それは「トム・ホーバスHCのチーム作り」と「吉井のキャラクター」という2つのポイントから考えてみると、よく理解できる。
まず「ホーバスHCのチーム作り」について。ホーバスHCは、特定のスターに頼らないチーム作りに重点を置いている。裏を返せば、現指揮官はオールスターのような面々を集めるのではなく、一芸に秀でた選手を集めてチームを作ってきた。
クラブチームでは「控え選手」だった吉井
ホーバスHCが男子の日本代表を率いて以降の3シーズンで、吉井のクラブチームでのレギュラーシーズンにおける数字を見て欲しい。先発試合数と出場時間の平均は以下の通りだ。
21-22シーズン:先発2試合、平均プレータイム13分13秒
22-23シーズン:先発22試合、平均プレータイム15分43秒
23-24シーズン:先発2試合、平均プレータイム10分50秒
※レギュラーシーズンは60試合。ただし、21-22シーズンだけはコロナの影響もあり53試合しか行なわれなかった。
もっとも長い時間プレーした22-23シーズンでさえ、先発したのは全試合の約37%に過ぎない。コートに立ったのは出場可能時間のうち約26%だけだった。
これがNBAでの成績ならばまだわかる。だが、国内リーグでそれだけしか出場していない選手が、代表に選ばれるのは普通では考えにくい。
実際、かつての日本代表はオールスターゲームの後に日本代表合宿を行なったことがあるくらいにオールスターに選ばれる選手と代表選手の多くは重なっていた。
ただ、ホーバス政権下ではそうはならなかった。現HCは各選手に明確な役割を与えるため、吉井のような一芸に秀でた選手を重宝してきたのだ。後述するが、彼は他の日本人選手にないような守備力とハードワーク、メンタリティを持っている。