「フォワードや中盤の選手が最終ラインまで戻って守備をしてマイボールにしたら、すごく褒めていた。味方のいい守備だったり、ナイスプレーを称えていて、そういうのっていいなと思った。意識的に取り入れてるわけじゃないですけど、そういう感じはありますね」

ピッチ外ではイジられても…ゴール前では“鬼”になる

　ドキュメンタリー本編では、ルベン・ディアスの印象的なシーンがある。ある重要な試合前、ロッカールームで円陣を組んだ後、彼は味方に向かって力強く吠えたのだ。

「誰が相手でも関係ない！　自分たちのプレーに集中すること！　前みたいに勝利への気持ちを見せろ！　ここで勝って初めて本物の王者になれる！　個人でもチームでも何度でも勝つんだ！　いくぞ！」

　世界最高峰のディフェンダーでさえ、あれだけ感情を出してピッチに向かい、ゴールを守り抜いている。チームを勝たせる選手には、そうした熱量も必要なのだろう――そんな思いが高井の中で芽生え、ピッチでの振る舞いに影響を及ぼしている。彼の中で何かが変化しているのは間違いないようだ。

　ピッチを離れた高井は、実に温和な性格である。川崎フロンターレの先輩たちからは「いつもヘラヘラしている」とイジられることもあるキャラクターだ。だがピッチに入れば、ゴールを守るために鬼とならなくてはいけない。そして、その覚悟を持ってパリ五輪の舞台に立つつもりだ。

「たくさんの人たちの思いを背負って頑張りたい。強豪と言われる国と対戦できるし、いい選手もたくさんいると思ってます。目指しているのは優勝です」

　代表合流前、最後のリーグ戦となったセレッソ大阪戦の後、高井は短くその決意を語った。何かが変わり始めた19歳の夏が、幕を開ける。

＜後編へ続く＞

#2に続く

最年少19歳で守備の要に…パリ五輪代表CB・高井幸大はメンタルも規格外？「5失点のあと…めっちゃ寝ました」“面倒くさがりな努力家”の素顔