甲子園の風BACK NUMBER
給与未払いで“教職員スト&生徒募集ストップ”の衝撃…和歌山南陵高が「全部員10人」で挑む甲子園「外からは『かわいそう』と見られますけど…」
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2024/07/18 06:00
学校側の不祥事の影響から多くの転校者がでた和歌山南陵高校。野球部も3年生だけの10人で甲子園に挑む
岡田監督は言う。
「こういう状況の中で10人でずっとやっていると、外から見れば『かわいそう』ってなると思うんです。確かに苦労はありましたけれど、学校がどうとかではなく、彼らなりに楽しみながらやっています。彼らは色々考えた上で、ここに残ってくれている。それは僕からすれば感謝しかないんです。もし、あと2人辞めてしまっていたら南陵高校として単独で大会には出られなかった。だから僕は特別な言葉を掛けるよりも、やりやすいようにしてあげたい。(バスケ部のインターハイ出場を受け)野球部も負けたくないですし、この夏に花を咲かせてくれたらいいですね」
3回戦の相手は「王者・智弁和歌山」
次戦となる3回戦は和歌山の盟主でもある智弁和歌山との対戦が決まった。
指揮官はこう続ける。
「最初、抽選が決まった時に『(智弁和歌山と同じブロックに入って)気の毒に……』みたいなことを言われたんですけれど、誰もそんなネガティブになっていません。むしろ勝算はありますし、いい山に入ったと思っているんです。高校生は何を起こすか分からないですから、楽しみなんです」
今年4月に開かれた学校法人の理事会では、経営陣全員が退任し、外部から新たに甲斐三樹彦理事長が就任することも発表された。未払いの給与は支払いが済み、今後の経営に関しても目処が立ったとし、来年度以降に向けて校名を変更したうえで生徒募集再開を目指している最中だという。
ただ、この夏が終われば和歌山南陵としての大会出場はひと区切りになる。それでも10人で培ってきたチーム力を武器に、簡単に夏を終わらせるつもりはない。
一歩前……いや、さらに前へ。校歌に並ぶその歌詞の通り、10人が束になり、まずは大きな山に全力でぶつかる。