甲子園の風BACK NUMBER
給与未払いで“教職員スト&生徒募集ストップ”の衝撃…和歌山南陵高が「全部員10人」で挑む甲子園「外からは『かわいそう』と見られますけど…」
posted2024/07/18 06:00
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
Fumi Sawai
「一歩前へ 今 手を繋ぎやれること
一歩前へ 今 夢掴め 今今今
Yeah 一歩前へ 一歩前へ」
歌手の横川翔氏、和燦(WARSAN)氏が作詞し、作曲は人気レゲエグループのINFINITY16が手掛けた、思わず踊り出してしまいそうな和歌山南陵高校の校歌が4-0で勝利を収めた紀北農芸戦後に球場に響き渡った。
スタンドにいる者も思わず驚くようなレゲエ調のアップテンポなノリは、あまりにも校歌らしくないが耳当たりが斬新だ。
だが、和歌山南陵高校を率いる岡田浩輝監督は校歌について誇らしげにこう述べる。
「自分はとてもいい曲だと思っているんです。一歩前へ、というところが今の南陵高校に合った歌詞で、今の自分たちをそのまま歌ってくれているんです」
この校歌は先月6日に公に発表されたばかりだという。ただ、学校は22年5月に発覚した騒動に揺れていた。
給与未払い→教職員のボイコット…生徒の募集停止
- 経営難を理由とする教員の給与未払いが発覚。教職員の授業のボイコットが起き、高校を経営する学校法人が経営の改善を求める措置命令を受け、生徒の募集停止が続いている。現在、全校生徒は3年生のみ18人。うち10人が野球部員だ。
そんな渦中にある和歌山南陵の指揮を執る27歳の岡田監督は千葉県出身。二松学舎大付では15年のセンバツに「5番・左翼」で出場し、当時のエースは2年生の大江竜聖(巨人)だった。
城西大に進み野球を続けたが、膝を負傷し、現役続行を断念。卒業後は一般企業に就職したが、3年前に和歌山南陵の監督に就任予定だったコーチから声を掛けられ、指導陣の1人として縁もゆかりもない和歌山にやってきた。
だが、自分を呼んでくれたはずの指導陣が騒動の関係で学校を去ることになり、当時の部長も退任。一昨秋には指導者は岡田1人だけになっていた。その秋の大会は監督代行としてベンチ入りしたが、昨春から正式に監督となり指揮を執ることになった。