時に“塩対応”で「違います」や「わかりません」など短いワードで返答するシーンもあったが、話題がバレーボールになれば違う。「なぜあの場面であのスパイクが打てたのか」「ブロックに続けて止められた後に打開した1本はどこを狙い、どう打ったのか」といったピンポイントな問いかけには、助走の入り方やトスの位置と空中での判断基準、具体的に打った場所や狙った相手の指に至るまで、いくつも具体例を挙げながら目を輝かせて話し続ける。

　そんな姿を見るたび、数えきれないほどの苦しさや悔しさを味わいながらも、この人は心底バレーボールが好きなんだ、と伝わってきた。だからこそ、古賀の話をもっとたくさん聞きたくて、細かな場面まで見れば見るほど、また新たなバレーボールの魅力に気づかされた。

　取材時に、ふと「バレーボールって面白いよね」と口にすると、目を細めて笑いながら、嬉しそうに言った。

「そうなんですよ。できることが増えればどんどん面白くなるし、あー私成長してる、って思うと、めちゃくちゃ楽しいんです」

2022年インタビュー。この時もバレーボールの話に花が咲いた　©︎Kiichi Matsumoto

不完全燃焼に終わった東京五輪

　足関節捻挫の影響もあり不完全燃焼のまま終えた東京五輪の後、一度は日本代表を離れるだけでなく、そのまま現役生活にも区切りをつけようと考えていた時期もあった。それでも、もう一度「やる」と決めた背景には並々ならぬ覚悟があった。

「身体もメンタルもギリギリ、また次が考えられるかと言えば無理でした。でも、もしパリオリンピックに行けなかった時、自分がそのコートに立って、行けなかったという現実を突きつけられるよりも、自分が代表に選ばれているのに辞退して行かないほうが後悔すると思ったんです」

　パリ五輪までの3年を「やる」と決めてからは、徹底してやり抜いた。

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