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「これが坂本か…」打撃不振で登録抹消の巨人・坂本勇人35歳 “復活ミニキャンプ”で再生をかけた挑戦…ショート復帰プランを考えてもよい?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2024/07/08 17:00
6月26日に一軍登録を抹消された巨人・坂本勇人。ファームでの”復活ミニキャンプ”で再生をはかれるか
坂本自身も「ショートと三塁では動きが全然違う」と語っているように、同じ内野手でも遊撃手は三塁手に比べて、守備での動く範囲と量が圧倒的に多い。三遊間から二遊間と前後を含めた打球を処理する守備範囲もショートは三塁手の倍以上の運動量を求められる。また併殺プレーでのベースカバー、外野との中継プレーでは、中継地点までかなりの量を走らなければならない。遊撃手は内野手の中でも特に運動量が多く、負担が大きいポジションなのである。
17年間、坂本はずっとそういう運動量をこなして、試合の中で無意識に下半身を使い、打席でのリズムも作ってきた。もちろんその分、負担も多く、ケガでの欠場が目立ってきたので、打撃を生かすためにコンバートが行われ、本人も納得して三塁へと転向したわけだ。ただ、ここまで打撃の状態が落ちてしまうとは、誰もが想像できなかったことだったのではないだろうか。
そう考えると坂本の復活の手段として、元に戻るというのも一つの手ではないだろうか。もう一度、ショートのポジションで再起をはかる。そういう選択があってもいいと思う。試合の中でショートの守備をこなし、そこからリズムを取り戻して打席に入る。もちろん肉体的な負担はまた大きくなるが、もしそれで坂本のあのバッティングが戻ってくるきっかけとなるのであれば、当面の間でもいいのでチャレンジしてみる価値はあるはずだ。
ミニキャンプで復調した坂本が遊撃手で戻ってくれば
坂本がファームでの“復活ミニキャンプ”に入ったことで、巨人の内野陣は一塁を守っていた岡本が三塁に回り、一塁にはシーズン序盤に打撃不振でリフレッシュ降格も経験した大城卓三捕手が入るようになった。捕手としてさまざまな評価を受けた大城だが、打撃の調子を取り戻したことで、一塁で働き場所を得た。そして岸田行倫捕手が攻守に存在感を見せて、正捕手の座をつかもうとしている。
その中で唯一、不安定なのが遊撃のポジションだった。坂本の後継者として期待された門脇が、開幕から攻守に精彩を欠き、ルーキーの泉口友汰内野手がとって替わってショートで先発する試合が多くなっている。ただ泉口も頑張ってはいるが打率2割0分6厘と、もう一つ結果を出しきれていない状況である。
“復活ミニキャンプ”で復調した坂本が遊撃手として戻ってくれば、得点力不足が深刻だったチームにとっても、飛躍的な打線の厚みにつながることになるはずである。
いい意味で“君子豹変”タイプの指揮官
もちろん1度決定したコンバートを元に戻すのは、阿部監督にとってもなかなか難しい決断かもしれない。ただ阿部監督はいい意味で、君子豹変するタイプの指揮官でもある。
これまでも「8回をケラー、9回をバルドナードで固定する」と語りながら、復帰した大勢投手をすぐにクローザー起用したり、「(4番・岡本の打順を)ちょっと考えようか」と発言した翌日には「1日寝たらやっぱり4番は岡本だなと思った」と「4番・岡本」を継続したりもしている。