あまり自分の言葉にこだわらない。リーダーとして最悪なのは、自分の言葉や決断に縛られて、しなければならない方向転換に時間がかかることだ。特に野球の場合は、そういう指揮官の逡巡がチームにとって致命的な事態を引き起こすことにもなりかねない。そういう意味では阿部監督は、組織にとって、チームにとって最良と判断したら、以前の決断にこだわらずに方向転換できる指導者だということだ。

いい意味での“君子豹変”タイプだという阿部慎之助監督。坂本のショート復帰の可能性は… ©︎Hideki Sugiyama

　だとすれば復帰してくる坂本の居場所を、一度、白紙に戻して考えることもありかもしれない。チームにとってどこがベストか、坂本にとってどこが一番、力を発揮できる場所なのか。そこはいまのチーム状況を含めて、阿部監督が総合的にどう判断するかだろう。

坂本に「ショートで復帰は？」と問うと…

　そしてもう一つは坂本自身がどう考えているか、である。

　練習後の室内練習場。引き上げる坂本に体調、コンデイションについて質問すると「腰を含めてコンディションはまったく問題ないです」という答えが返ってきた。

　ならば――。

「ショートで復帰は？」

　もちろんいま、本人の口から答えようのない質問であることは承知で質問を投げかけると「ムリ、ムリ！」と笑ってロッカーに消えていった。

　ただ、この“復活ミニキャンプ”での練習内容を見る限り、決してそれは絵空事ではないという確信だけは持てた。