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「五輪に出たいとかは、ないですね」《SGH次世代エース》佐藤一世&近藤幸太郎が語る“箱根の先”の難しさ…「世界を目指さない」は悪なのか?
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph byYuki Suenaga
posted2024/05/19 11:00
99回大会「花の2区」で“歴代最高”と言われるデッドヒートを見せた近藤幸太郎(右)と、1月の箱根路で優勝を決定づける快走を見せた佐藤一世
愛知県出身で中日ファンの近藤が「普段は陸上よりも野球を見るのが好き」と言えば、佐藤も「卒業旅行でイギリスに旅行し、プレミアリーグの試合を観戦した」ほどのサッカー好きなのだという。近藤が続ける。
「結局、駅伝はやっぱり別物なんですよ。今年の箱根は『駒大が大本命』と言われる中で青学が総合優勝しましたけど、駒大は色んなプレッシャーもあっただろうし、そういう面では青学の方が有利だった。“2年連続3冠”を目指すというのは、ものすごい重圧だったと思うので、そこはやっぱりチャレンジャーの方が強いですよね」
裏を返せば「チームとしての駅伝の強さと、ランナーとしての個人の強さの足し算」はやはり異なるということなのだろう。
青学大と駒大ではそもそものアプローチが異なる
近藤と佐藤が口をそろえたのは、「駅伝で活躍することを目標に掲げて、目の前の課題をひとつずつクリアしていった結果として学生トップクラスの走力がついた」ということだ。それは「世界で戦う」という目標を据え、最初からそこに向かって計画的にトレーニングし、走力を伸ばそうとする駒大のような大学とはアプローチの根本が異なる。
ただ、それはどちらが良いという話でもないだろう。高すぎる目標は時にモチベーションの低下も生む。「世界」を目指すことが、必ずしもすべての箱根ランナーにとって正解というわけではないのは自明のことだ。
今は「オリンピックに出たいとは思わない」という2人だが、まだ社会人1年目と2年目の若手でもある。
大学時代と同様に、一段ずつ階段を上っていった結果として、一番高いところが見えてくる可能性はもちろんあるはずだ。現に佐藤は「マラソンに興味がある」と言い、近藤は「マラソンは走りたくない」と嘯きつつも、オリンピックのマラソン代表選考レースである「MGCには出てみたい」と漏らしていた。