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モイネロ「4年40億」より驚いた…“通算3勝”スチュワートとなぜ「年俸7億」? 現地で見た“全米ドラ1蹴った男”の激変「日本もホークスも大好き」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/03/31 11:02
今春撮影のカーター・スチュワートJr.。ブルペンでは「まっすぐ!」など日本語が響く
「そう思います。数年前の自分でしたら、ちょっと感情が出てしまって自分に怒ったりとか、そういうパターンでボール、ボールっていう流れになりやすかった。だけど最近は、本当に冷静にマウンドの上に立てている」
また、今季を迎えるにあたりカットボールを改良したことも大きいという。
「カットボールの感覚が非常に良く、どのカウントでもゾーンに投げられる。真っすぐ以外の球種でストライクをとれるボールがこれまでなかったので、プラスになっています。握り方を変えました。去年はスライダーのようになっていてカーブとの差が少なかった。本当のカットボールになりました。アメリカでオフシーズンの練習をしていた施設でピッチデザイン的なことをして、そこでいろんな握りをやってみて一番ハマったものをやっています」
暗い表情が激変…響く日本語「まっすぐ!」
スチュワートJr.は一人の投手としても、一人の人間としても来日当初に比べればずいぶんと変わった。初めの頃は正直、ホームシックになってすぐに帰国してしまうのではないかと思うほど毎日暗い表情をしていた。日本の文化や生活に馴染むのにも苦労していたし、彼自身が決して前向きではなかった。スナック菓子を買うのでさえ「日本で売っているものはアメリカとは味が違う」と言って手に取らなかった。
だが、2年ほど前から明るい表情が目立つようになり、日本人のチームメイトとも積極的に交流するようになった。ポジティブな思考のおかげか日本語もかなり上達した。今ではブルペンで捕手に球種を伝えるときもストレートやフォーシームとは言わない。「まっすぐ!」。ひらがなで表記したくなるほど、発音もきれいだ。
「日本もホークスも大好き」
「本当に日本もホークスも大好き。だからホークスと契約を延長しました。去年ようやく一軍で先発ローテに入れた。これからもチームの勝利に貢献できるよう頑張りたい」
チーム内の争いにも勝って開幕ローテ入りを果たした。相手は昨年までリーグ3連覇を果たしているオリックスだが、昨年の自身3勝のうちオリックス戦で2勝を挙げ、対戦防御率も1.38と好相性だった。
また、未完だったからこそ大きな上積みが期待できるというもの。全米ドラ1の看板を引っ提げた24歳の大器が“額面どおり”に白星を稼いでくれれば、今季のソフトバンクは黄金期に匹敵する強さを見せそうだ。