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モイネロ「4年40億」より驚いた…“通算3勝”スチュワートとなぜ「年俸7億」? 現地で見た“全米ドラ1蹴った男”の激変「日本もホークスも大好き」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/03/31 11:02
今春撮影のカーター・スチュワートJr.。ブルペンでは「まっすぐ!」など日本語が響く
球の強さを感じる球質はもちろん、制球力に大きな成長を感じた。以前は力任せに腕を振っていただけに見えたが、効率よく並進運動ができるフォームになっており、投げるボールを見なくとも「この投げ方ならば暴れないな」という安心感が伝わってくる。昨年までのファーム時代をよく知る小久保裕紀監督も「高めに抜ける割合が本当になくなった。その辺が一番変わったところ。(去年は)軽く投げようが真っすぐ強く投げようが結構がんがん抜けていたので。もうそれはない」と絶賛していた。
スチュワートJr.によれば「オフの間は地元のフロリダのトレーニング施設に通って、ウエイトはいつも通りにやりつつ、モビリティを意識して柔軟性をちょっと良くするためのトレーニングは結構やった」とのこと。
実戦でも3月3日、韓国・斗山ベアーズとの試合では3回を投げて38球1安打4三振無四球で無失点と抜群の安定感。ペナント開幕直前の同23日の広島とのオープン戦では5回72球で2安打5三振1四球無失点のピッチングを見せた。
なかでも前述した3日の斗山戦の内容に、スチュワートJr.の成長を感じた。
初回の1番バッターへの投球に関しては全く思い通りではなかった。高めに抜ける昨年までの悪癖が顔を出し、3ボール0ストライクのカウントを作ってしまった。スチュワートJr.がこれまで台頭しなかった原因は技術面もさることながら、精神面の幼さもその一つだった。このような立ち上がりになるとそのまま崩れてしまう。それが以前の彼だった。
だが、今年は違うようだ。マウンドで表情を変えず、動じる気配もなく、そこから修正してストライクを集めた。
「昨年までのアナタならば崩れていたのでは?」
登板後の取材。その場面について「昨年までのアナタならば崩れていたのでは?」と敢えて率直に質問した。通訳が訳すとスチュワートJr.は苦笑いを浮かべたが、真摯に答えてくれた。