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「プロってこんなもんなんだ」で大失速からの復活劇…《昨季33セーブ》ヤクルト“不動の守護神”田口麗斗が貫く「盛り上げ役」の決意
posted2024/03/30 11:06
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
JIJI PRESS
春季キャンプが折り返しに差し掛かった2月中旬。
左ふくらはぎに違和感を覚えた田口麗斗が一軍キャンプ地の沖縄・浦添を離れ、二軍キャンプ地の宮崎・西都に合流するという報道が流れた。昨季、リーグ2位となる33セーブを挙げた守護神の離脱は、燕ファンには大きなショックだったに違いない。
実は春季キャンプ序盤、田口は調整にちょっとした「工夫」を加えていた。
今年の春季キャンプ2クール目が始まったばかりの頃、徐々にブルペンに入るピッチャーが増えてくるなか、田口は隣接する室内練習場からブルペンを何度ものぞき込むも、なかなか投げようとしなかった。
「投げるのを我慢しています。去年は抑えを取りに行きたくてアピールのためにキャンプの序盤から投げていましたけれど、今年は自分の新しいペースを作ろうと思って。去年、キャンプの最後の方はヘバっていたのもあるので、投げ始めるのを遅らせれば疲れるのがもっと後になると思ったんです」
第2クールまでは1月に行った自主トレーニングの延長で体作りに励み、その合間に午後からブルペンで感触を確かめるために数球ほど投げることはあった。だが、それはあくまで投げる“練習”だったのだという。
「しっかり投げ込むのはユニホームをちゃんと着ている時にしたいので。去年は競わないといけない立場だったので2クール目に投げていましたけれど、今年は自分の力もある程度知られているし、新たな取り組みを全うしたかったんです」
キャンプは「ピークを後ろに」持って行く狙いだったが…
調整を遅らせることでピークを後ろに持っていく狙いもあったが、進めるうちに左足に支障をきたしてしまった。思いもよらぬ事態に直面してしまったが、それでも西都キャンプでは、グッズ売り場の店頭に出て自分のグッズに直筆サインをするなど終始明るい表情を見せていたという。
田口と言えば、何より明るいキャラクターも魅力のひとつだ。
本拠地の神宮球場では、チームが勝利すればチアリーダーに混じって踊り、スタンドを共に盛り上げた。試合後のロッカールームでは活躍したチームメイトを撮影した写真を自身のSNSにアップし、健闘を称える。自身のTikTokではありのままの表情を流すこともあり、仲間たちの素顔をファンに届ける役目でもあった。