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「お前、痛いならやめろっ」「敵に弱さ見せんな」ヴィッセル神戸で永井秀樹SDが感じた“黄金期ヴェルディの緊張感”「ラモスさんは紅白戦でブチギレた」
posted2024/03/30 11:09
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph by
Getty Images
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「ラモスさんが紅白戦でブチギレ」
2023年にJリーグ初制覇を成し遂げたヴィッセル神戸において、いずれも元日本代表で「四天王」と呼ばれたFW大迫勇也、FW武藤嘉紀、MF山口蛍、DF酒井高徳の存在は欠かせなかった。22点を挙げた大迫は得点王とリーグMVPをダブル受賞。4人全員がリーグベスト11に選出されたことからも、彼らの貢献度の高さがうかがえる。
神戸のスポーツダイレクター永井秀樹(53歳)はシーズン開幕前、彼ら30歳を超えたベテランたちと若手選手の間にギャップを感じていたと振り返る。
「開幕前は元代表で、欧州でのプレー経験もある4人の意識の高さが際立っていた。一方で、それ以外の若手、中堅選手には物足りなさのようなものも感じていました。元代表の4人は前年のこと(13位)がよほど悔しかったのか、オフもほとんど返上で、キャンプインのときから2023年にかける気持ちが出ていましたからね」
永井はそんな雰囲気を見て、かつて自らも所属したJリーグ開幕当時のあのヴェルディ川崎(現・東京V)を思い出したという。
「私は若手でしたが、チームにはラモス(瑠偉)さんのほか、カズさん(三浦知良)、柱谷哲二さん、北澤豪さんら代表経験者が多くいました。たとえばラモスさんは試合に向けた紅白戦でメンバーに入った若手がミスを2回くらいすれば『オマエ、やる気あるのか!』ってすごい剣幕で怒鳴って……。3回ミスすれば『出ていけっ!』、4回目には『やってられないっ!』と地面にビブスを叩きつけるほどでした。当時のヴェルディには緊張感がありました。
練習などを見ているとヴィッセルの4人は周りにも高い要求をしていましたからね」
「お前、痛いならやめろよ」ロッカールームでの話
永井からすると、彼らの行動は理解できた。ただ、中堅選手からは「4人の要求がキツ過ぎる。若手が委縮して、伸び伸びプレーできていない」という声もあがっていた。チームとしてより力を発揮するためには、どこかで折り合いが必要だと考えていた。
“四天王”と若手の間に入る役割を果たしたのが、2023年に湘南ベルマーレからレンタル加入したMF齊藤未月(24年1月に完全移籍)だった。齊藤は25歳と年齢的には中堅だが、2020~21年に、ロシアのルビン・カザンでプレーし、海外での経験もある。