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「三木谷オーナーとの板挟み? ないです(苦笑)」51歳で“転職”…ヴィッセル神戸・永井秀樹に聞くSDの仕事「一番嫌なのは戦力外通告ですね」
posted2024/03/30 11:07
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph by
J.LEAGUE
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51歳、スポーツダイレクターへの“転身”
昨年のJリーグで初優勝したヴィッセル神戸。2年前の2022年は優勝候補に挙げられながら、開幕から11試合勝ちがないなど最終的に13位と低迷した。そこから昨季は一気に頂点まで上り詰めた。クラブのスポーツダイレクター(以下SD)としてチームの現場を支えてきた永井秀樹(53歳)はどう振り返るのか。
45歳まで現役を続けた永井は、2016年に引退。指導者に転身し、東京ヴェルディの監督を経て2022年から神戸でSDを務めている(当時永井は51歳だった)。SDはチーム編成の責任者。選手の獲得や放出を決断し、相手チームや代理人との交渉、契約条件の調整などを行う。
しかし永井にとって選手、監督の経験はあるもののSDという立場は初めてだった。就任当初、SDの役目についてはっきりとしたイメージがなく「走りながら考えてきた」と明かす。
2017年以降、神戸は元ドイツ代表のルーカス・ポドルスキや元スペイン代表のアンドレス・イニエスタら海外のビッグネームに加え、元日本代表で欧州でのプレー経験のある山口蛍、酒井高徳、大迫勇也、武藤嘉紀らを次々に獲得。Jクラブのなかで最も多くの人件費をかけてチームを強化してきた。
近年、予算は削減傾向にあるといわれるが、昨年公表された2022年度の人件費を見ても48億3900万円と、2位の横浜F・マリノスに10億円以上の差をつけてトップに立っている。
「えっ、大丈夫なの?」不安の声も…
しかし、13位に終わった2022年のシーズンオフ、SDとして永井が打った手はこれまでとは少し様相が異なっていた。
セレッソ大阪から獲得したブラジル人FWジェアン・パトリッキや湘南ベルマーレからレンタル移籍で加入したMF齊藤未月(24年1月12日に完全移籍)……ビッグネーム補強路線ではなく、堅実さを感じさせた。
昨季、パトリッキは主にスーパーサブとして27試合に出場し4ゴール。齊藤はシーズン終盤こそケガで戦列を離れたが、開幕から山口とともに中盤に欠かせない“汗かき役”としての役目を十分に果たした。永井が証言する。