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「お前、痛いならやめろっ」「敵に弱さ見せんな」ヴィッセル神戸で永井秀樹SDが感じた“黄金期ヴェルディの緊張感”「ラモスさんは紅白戦でブチギレた」
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byGetty Images
posted2024/03/30 11:09
2016年、45歳で現役引退。2022年から神戸でSDを務める永井秀樹(53歳)。写真はJリーグ開幕の1993年、ヴェルディ川崎時代
「いまでこそ笑い話ですが、齊藤については、獲得に向けての調査段階では『場の空気を読まずに言いたいことを何でも言ってしまう』という評判もあったんです。ただ、自分自身おそらく現役時代はそういう選手でしたし、気持ちはわかる。獲得前に実際に会ってみたら、やっぱりいい顔つきをしていて、すぐに獲得を決めたという経緯がありました。
齋藤は開幕前のキャンプでチームに合流すると、控え室で『サコくん(大迫)さ、もっとこういうときはこうして……』『ヨッチ(武藤)も、あそこはああして』って、どんどん言ってくるわけです。ベテランと呼ばれる年齢になると、チーム内で腫れ物に触るような扱いをされるときがあるものです。しかも、4人には経験も実績もある。でも齊藤が彼らに遠慮することなく、どんどん意見することで、それに続くように佐々木大樹や山川哲史、前川黛也らも自分らしさを出していけるようになったと私には見えましたね」
永井の証言の通り、Jリーグ開幕から連覇を果たしたヴェルディ川崎はメンバー争いも熾烈で、紅白戦から年齢や実績に関係なくバチバチとやり合っていた。その激しさは公式戦以上だったという声もある。
「最近そういうチームはなかったと思いますが、昨季のヴィッセルは近い雰囲気がありました。
もう終わった話だから言いますけど、優勝争いが佳境だった第33節のホーム・名古屋戦のことです。前半にMF佐々木大樹が相手選手との接触で腰を痛めたんです。佐々木は痛みを必死にこらえながらもプレーを続け、ハーフタイムにロッカールームに戻ってきました。そしたら、大迫たちがすごい形相で『痛いならやめろよ』『敵に弱さ見せんな』『やるか、やらないのかはっきりしろ!』って言っているわけです。結局、佐々木は決心してプレーを続けました(後半途中交代)。もちろんケガの選手を無理に出場させることはよくありません。ただ、そのときの雰囲気を見て、これなら優勝できると思いましたね」
「ヴェルディでの件は、反省しています」
永井は今年、神戸のSDとして3年目を迎えた。今オフも日本代表経験のある井手口陽介のほか、ヴィッセルのアカデミー(下部組織)出身で浦和レッズから7年ぶりの復帰となる岩波拓也を獲得するなど、連覇に向け手堅い動きをしている。
本人も「サポーターの方に受け入れられていないのでは」と本音をこぼした通り(インタビュー中編参照)、2022年3月10日に日本サッカー協会から東京ヴェルディ監督時代にパワハラ行為があったと認定され1年間のS級ライセンス停止処分を受けていた。そんななか同月21日に現職に転じる。どんな経緯があったのだろうか。