甲子園の風BACK NUMBER
「プライベートな時間がなく…」被災・日本航空石川球児がセンバツで口にした“本音”「練習できず悔しさも」「踏ん張って甲子園で成果を」
text by
間淳Jun Aida
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/27 11:05
応援席に向かってあいさつする日本航空石川ナイン。常総学院との1点差ゲームは両チーム無失策のナイスゲームだった
今までは苦しい場面で我慢できず、崩れてしまうケースが少なくなかった。
しかし、「厳しい場面を乗り越えなければチームから信頼してもらえません。忍耐力が問われます。今まで当たり前だった野球ができなくなって、1球を大切にしようという気持ちも強くなりました」と意識が変化した。この日の試合も三者凡退で抑えたイニングは2度しかなかったが、犠牲フライの1失点のみと粘った。
「被災した方々に勇気や元気を届けるプレーをしようと思ってマウンドに上がりました。踏ん張って練習してきた成果を甲子園で発揮できました。下を向かず前を見ていきたいです」
まだ、復興のめどが立たない地域もあります
ADVERTISEMENT
遠かった1点。届かなかった勝利に、中村監督は「選手たちは理想的な試合運びをしてくれました。北岡はチームに流れを呼び込める選手と期待していて、その通り9回の守備でスーパープレーを見せてくれました。その流れを得点に生かせなかったのは監督の力のなさです」と頭を下げた。だが、うつむかずに真っ直ぐ前を向いた。
「笑顔、感謝、恩返しを選手が体現してくれました」
地震によって一度はあきらめかけた甲子園。地元の人たちや避難先の山梨県の人たちをはじめ、周囲のサポートを受けて選手たちは夢の舞台に立った。
「まだ、復興のめどが立たない地域もあります。お世話になった人たちへの感謝と恩返しをプレーに込めました」
北岡がチームの気持ちを代弁する。思いは十分に届いた。甲子園に響いた拍手と歓声が証明している。