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「いやいやいや!」謙虚な南野拓実、久保建英は「行くしかないなと」冨安健洋に感謝…取材エリアで見た“素顔の日本代表”と「ベースの復活」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byPlaymaker/MB Media/Getty Images
posted2024/01/26 11:40
インドネシア戦で3-1で勝利した日本代表。チームの「ベース」が戻った状態で決勝トーナメントへと進む
「アジアだからといって、80パーセントの力で勝てる相手なんていないです。周りの人は『(アジアカップならパワーを)抑えていても、やれるだろう』と言うかもしれないけど、それではやはり負けてしまう。自分たちが持っているものを100%出して、試合後に『キツかったな、今日の試合は』と感じるくらいに力を出して、その結果が1-0なのか、3-0なのか、5-0なのか……。これまでは、ベースとなる気持ちの部分が欠けていたんじゃないかなと思います」
そして、試合前日。ディフェンスリーダーの冨安健洋は、記者会見の場を使って国内外に向け、そしてチーム内外に向けて、宣言した。
「相手の勢いだったりに飲まれず、むしろ僕たちから仕掛けて『叩きのめす気持ち』でやりたい」
上田のPKは堂安との意思疎通のたまもの
アジアで“闘う”準備は、できていた。それがインドネシア戦の勝因だった。
試合は開始早々の2分、ペナルティエリア内右サイドの深い位置(右ポケット)をめがけて、上田綺世が迷わずに飛び出す。上田の動きを事前にわかっていた堂安がパスを送った。そして、そこでボールを収めた上田は、相手からのファールを受け、PKを獲得した。
実はこのシーン、2人のコミュニケーションの賜物である。ようやく初先発の座をつかめると感じていた2人は、試合前から綿密に言葉をかわしてきた。
試合を優位に進めるためにはどうすべきか、相手が嫌がる攻撃とは何か、練習で取り組んでいる再現性のある攻撃からゴールが生まれたときにはチームにどのような効果があるか……。
上田は言う。
「試合の先制点とか色々な意味がありましたけど、(チーム全体の)オフェンス的な目線で見ても、意味のあるゴールだったんじゃないかなと思います」
上田のPKで先手を取れた。その意義は大きかった。しかし――。
その後の日本は繰り返しゴールに迫りながら、決定力を欠いていた。前半にはチームとして、上田のPK以外に6本のシュートを放ったが、1本も枠内に飛ばせなかった(中村敬斗のゴールポストに当たったシュートは“枠外”としてカウントされる)。
攻撃の形はよくても精度を欠く時間帯。メンタル面の準備が十分でなければ、焦りをつのらせ、ベトナム戦のように逆転を許していたかもしれない。
久保の背中から聞こえてきた“冨安の声”
ただ、そんな時間帯で日本が見せたのが、過去2試合にはなかった守備での強度と緻密さだった。