「もちろん結果だけ見れば伊地知さん本人は納得いかないレースだったと思います。でも“優勝候補”と言われていた駒大や青学大の、本当に強い選手を相手に、一歩も引かない走りを見せてくれた。その姿はとても感動しましたし、率直に自分も頑張らないといけないなと思えました」

　今大会、國學院大は優勝候補のひとつとして名前を挙げられることもあった。

　ただ、戦前は「一強」とまで言われ圧倒的な戦力を誇った駒大や、ここ10大会で6度の総合優勝を誇る青学大と比すれば、箱根路での優勝経験があるわけではない。ルーキーである吉田のような選手にとっては、「箱根で勝つ」という絵をリアルにイメージすることはなかなか難しい部分もあったはずだ。

　そんな中で、伊地知は守りに入るのではなく、あえてリスクを取って優勝候補校相手に「勝ちにいく」走りを見せた。それは後輩たちに向けて、何よりのメッセージでもあった。

1区を走った主将の伊地知は駒大、青学大らの先頭集団に果敢についていった　©JMPA

「あの走りを見たら、自分も緊張している場合じゃないと思って。もともと『走れなかった同期や4年生の先輩の分まで、お前が走るんだぞ』というのは監督からも言われていたので、襷の重さも感じました。苦しくなった時には襷に触って、力をもらって走っていたくらいで……。だからこそ、個人の結果についてはすごく悔しさが残っています」

今回のメンバー中、9人が残る来季の國學院大

　来季の國學院大は今大会を走ったメンバーのうち、吉田を含め9人が残る。

　2区で8人抜きの区間3位と好走した大エース・平林清澄と、今大会はケガで走れなかったエース格の山本歩夢の2人が最上級生を迎え、集大成の年でもある。

ゴール地点でアンカーを迎える伊地知と来季主将の平林。下級生が多かっただけに、来季の國學院の下馬評は高い　©Yuki Suenaga

　初めての夢舞台を終え、そんな勝負の年を迎える吉田はこう語る。

「今はまだ『ケツメイシの息子』と言われることが多いですけど、もっともっと走りで強くなって『あの吉田の父親が……』と、主語を自分で言ってもらえるように頑張りたいと思います」

　箱根路の常連校から、来季はいよいよ目指す“頂点”へ――。次世代エースの「覚悟」は、すでに決まっている。