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“セクシー旋風”野洲の天才・青木孝太(36歳)は今「ウッチーや槙野、陽介…みんなと差が開いた」28歳で引退、第二の人生で苦しんだ無気力生活 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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posted2023/12/29 11:03

“セクシー旋風”野洲の天才・青木孝太(36歳)は今「ウッチーや槙野、陽介…みんなと差が開いた」28歳で引退、第二の人生で苦しんだ無気力生活<Number Web> photograph by Takahito Ando

現在は電気工技師として働く青木孝太(36歳)。プロ引退後は無気力な生活を過ごしたが、天職と出会った

 プロサッカー選手は、試合を除けば、一日3〜4時間の練習がある程度、それ以外は全て自由時間だ。しかし、社会人となれば就業時間は最低8時間。残業がつけばそれ以上。180度違う現実に戸惑った。

 その会社を半年で辞めた青木は、別の会社で再び営業職について3年間勤務。しかし、ただ時間が過ぎて行くだけで無気力な自分がいた。契約を取れるようになっても、サッカーで得られていた達成感や喜びは見出せない。

「完全に自分の弱さなのですが、当時は自分に自信が持てなかったし、何を目指すべきなのかがはっきりしなかった。ぼやけた人生を送っていて、つまらなかったですね」

天職との出会い「自分が世間の役に立てる」

 平凡な毎日を過ごしていた青木に転機が訪れる。2020年、親族が経営する電気工事の会社に転職し、電気工事士としての仕事を始めた。最初は触ったこともない電気工具や見たこともない配線図、使ったことがない専門用語に困惑したが、徐々にこの仕事に魅せられていく。

「電気って本当に奥が深いんです。みんな当たり前のように家や会社などで電気を点けていますが、その電気が点くまでに多くのドラマがあるんですよ。最初に電気が点いた時の感動や、完成した後に営業している店舗や企業、生活している家を見ると、なんとも言えない“幸福感”を得られるんです。自分が世間の役に立てているんだなと思える瞬間なんです」

 身に纏っているのは作業着ではあるが、ゴールネットを揺らす快感を思い出した。

「新築物件の電気工事を担当して、1年くらいかけて会社の仲間や他の業種の人たちと一緒になって完成させた時に、めちゃくちゃ達成感があったんですよ。サッカーで得点を決めたときのような感覚を覚えたんです。営業ではいくら契約を取ってもこの感覚はなかったんですけどね(笑)。

 あとは重たいケーブルをみんなで運んだり、引っ張ったりするのでチームワークが大事な仕事なんで、絆も深まりますし、自分自身もチームのために何をすべきか真剣に考えないといけない。今は本当に楽しいし、この仕事に生き甲斐を感じているんです」

【次ページ】 引け目を感じていた、かつての戦友たちに会える?

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