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プロ野球PRESSBACK NUMBER
阪神・岡田監督&平田ヘッドが激怒…それでも大竹耕太郎は冷静だった「普通は速い球だと思いますよね」“崖っぷちの左腕”はなぜ再生したのか?
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/12/19 11:03
日本シリーズの行方を占う第5戦の先発を託された阪神・大竹耕太郎(28歳)。今季はリーグでも自己最多の12勝をマークした
「湯浅も今年の交流戦で、セーブシチュエーションで失敗しています。しかも同じ甲子園で、怖がってもおかしくない場面だったのに、払拭したように僕には見えました。オリックスって、僕にとっても嫌なイメージしかありませんでした。でも、あの姿を見て『俺もやらなきゃいけない』って、そういうマインドにさせてもらったんです」
湯浅は6月、オリックス戦の9回に2被弾して逆転負け。二軍降格し、故障も重なって長いトンネルに入っていた。だからこそ、大竹は身震いし、自らと重ね合わせた。
日本シリーズ第5戦で大竹は5回1失点。自身の勝敗こそつかなかったが、役目を果たした。
「プロに入ってから大事な試合を任されて、うまくいった記憶がありませんでした。初めて大事な試合で、力を出せたのは自信になりました。120点を出すのではなく、100点じゃなくてもいいんです。80点くらいを出せればいいかなと思っていました」
もしも、大竹耕太郎がいなければ…
阪神のリーグ優勝、日本一を見届けた秋、つい、こんな問いを発してしまいたくなる。
「もしも、大竹耕太郎が今年の阪神にいなければ……」
その答えは、意外なところにあった。
日本一を決めた直後のセレモニー中のことだ。チャンピオンフラッグを持つ記念撮影では中央に立つ岡田彰布監督の周りに選手が並んでいく。日本シリーズMVPの近本光司が隣に陣取った以外は、シーズン中に活躍した投手陣が勢揃いしたのである。村上頌樹や守護神の岩崎優が脇を固め、大竹も村上の横に立った。
この立ち位置は、その場で譲り合ったものではない。あらかじめ、球団が決めたポジションである。集合写真は大竹が飛躍した証だった。心を変えて、人生を変えた。自問自答しながら歩んできた道の先には、こんなにも素晴らしい景色が広がっていた。