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大谷翔平“ブルージェイズ急浮上”の報道はウソだった? 「“幻の記事”は怒りが冷めたら…」カナダ人記者の運命を変えた“オオタニ争奪戦”その後
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2023/12/15 06:00
ブルージェイズの主砲ゲレーロ・ジュニア(左)と塁上で言葉をかわす大谷翔平。2024年4月下旬、ドジャースの一員としてトロントの地を訪れる予定だ
改めて考えても、大谷がブルージェイズに入団していたら、とても興味深いストーリーになっていたのでしょう。仕事柄、普段の私はブルージェイズの勝敗には一喜一憂はしませんが、いいストーリーを追いかけたいという気持ちはあります。現状、大谷よりも興味深い題材は存在しませんから。
通常、ブルージェイズのホームゲームを取材する記者は10人くらいですが、遠征に同行するのは自分も含めて3人くらい。大谷がブルージェイズ入りしていたら、その数は何倍にも膨れ上がっていたはずです。向こう10年、新しい世界が広がることをブルージェイズのファン、関係者は夢見たのです。
トロント遠征ではブーイング確実?
ただ結局、大谷の獲得は叶わず、今後、ブルージェイズは違った方向に足を踏み出さなければいけません。チームフロントは気持ちを切り替え、FA、トレードマーケットに目を向けています。
ドジャースは4月下旬、トロントに遠征してきますが、その際、大谷に向けてかなり激しいブーイングが飛ぶかもしれません。まだ今回のFA戦線の記憶、獲得に近づきながらも叶わなかった痛みはファンの中で鮮明でしょうから。
大谷はもともとブルージェイズ戦ではよく打つ印象ですし、4月のシリーズで470フィートの大ホームランでも打てば、そのボールはフィールドに投げ返され、厳しいリアクションがあるのではないでしょうか。
とはいえ、個人的には大谷が今後もずっとトロントでブーイングされ続けるとは考えていません。大谷は嫌うのが難しい選手だという背景がありますし、トロントのファンの怒りは大谷個人に向けられたものではないとも思います。いずれチームが成功を手にしたら、ブルージェイズファンはすべてを忘れるでしょう。
少なくとも、私はそうであることを望んでいます。先ほども話した通り、大谷はこのオフ、巨大なドラマを生み出し、MLBを盛り上げてくれました。それは野球界全体にとってポジティブなことであり、今はそれぞれの思いを抱えているファンも、いずれすべてを笑顔で思い出せる日が来ることを願っています。