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甲子園の風BACK NUMBER
「野球しかなかったら、引退すると本当に何も残らない」《2016年ヤクルトドラ1》寺島成輝が“戦力外→4カ月のサラリーマン生活”で感じたリアル
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byNumberWeb
posted2023/12/13 11:02
2016年にドラフト1位でヤクルトに入団した寺島成輝。2022年に戦力外通告を受け、一般企業への就職も経験した
「2月のオープン戦から3月のWBCもしっかり(テレビで)見ていました。一度は野球を離れたいとは思いましたけど、自分はやっぱり野球が好きなんだなと」
同世代の躍動にも刺激を受けた。今年、阪神の38年ぶりの日本一に貢献し、大ブレイクした村上頌樹投手は、16年春の近畿大会決勝で投げ合った間柄だ。寺島は途中登板だったが、村上は智弁学園のエースとして先発し、堂々たるピッチングを披露した。
その村上のプロでの躍動も、寺島は何度もテレビで目にした。
「悔しいという感情はなくて、自分が少しでも関わった選手の活躍は嬉しいです。(村上は)大学からプロに入って、僕は絶対に(一軍に)出てくると思っていたんです。バッターとして対戦した時から、トップクラスでいいピッチャーだと思いました。真っすぐは数字よりめちゃくちゃ速く感じたし、変化球もストレートと同じ腕の振りで切れがいい。チェンジアップは“来た”と思って思い切り振ったら(視界から)消えた覚えがあります。コントロールがいいし、見ていて気持ちのいいピッチャーです」
自分が一生懸命になれるきっかけを野球界からもらいながら、奔走する日々は続く。
野球での繋がりは大事にしつつ……「人」で勝負の第二幕
野球での繋がりは大事にしつつも「人で売っていける人間になりたい」と今後を見据えた。そして、こうも口にする。
「野球は大好きなので、それを上回ることが見つかるか分かりませんが……会社に入るかもしれないし、はたまた起業するかもしれない。まだまだ見通しが甘い部分はあるかもしれませんけれど、今後をじっくりと考えていきたいです」
寺島成輝、25歳。人生はまだ最初の登り坂に差し掛かったところだ。
<前編とあわせてお読みください>
寺島成輝(てらしま・なるき)
1998年7月10日、大阪府生まれ。履正社高では山口裕次郎(JR東日本→引退)と左腕の2本柱としてプロから注目を集める。2016年秋のドラフト会議で東京ヤクルトスワローズから1位指名を受け、翌年入団。プロ4年目の2020年には一軍で30試合に登板するも、6年目の2022年に戦力外に。その後は野球から離れて一般企業に就職するなど、幅広い分野で経験を積んでいる