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甲子園の風BACK NUMBER
「野球しかなかったら、引退すると本当に何も残らない」《2016年ヤクルトドラ1》寺島成輝が“戦力外→4カ月のサラリーマン生活”で感じたリアル
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byNumberWeb
posted2023/12/13 11:02
2016年にドラフト1位でヤクルトに入団した寺島成輝。2022年に戦力外通告を受け、一般企業への就職も経験した
わずか4カ月ほどの社会経験の中で、現実も肌で感じた。
これまでの人生では、ほとんどの時間でボール、グローブ、バット、あるいはトレーニング器具しか手にしてこなかった。それだけに自分でパソコンを操作し、何かを作成する、知り得る、学ぶ、という所作はなかなかハードルが高かったという。
「野球だけやっておけばいい」という風潮は変えるべき
「まず、パソコンの使い方が分からなくて。現役の時からちゃんと(引退後の世界に)興味を持っておけば良かったと思いました。もちろん、野球選手は野球で結果を出すことが大前提です。でも、現役選手ってセカンドキャリアに触れることにマイナスなイメージを持ちがちなんですよ。でも、僕は全然良いと思うんです。むしろ、ガンガン他の世界にも触れるべきだなと思うようになりました。
いざ野球を辞めた時に、『(野球以外に)こういうこともできます』と言えれば、評価が変わると思うんです。『ちゃんと将来のことも考えて生活していたんだ』と見られるようになりますし。だから『野球だけやっておけばいい』という風潮は変えた方がいいと思います。僕の場合、そこが一番難しかった。社会に触れるというか、セカンドキャリアに触れることが、マイナスでない業界になってくれたらと思うんです」
選手によってはソフトを駆使し、コンピューターで自身の成績を分析するなど野球に活用している場合もある。視野をさらに広げ、新たな分野に興味を持つことで様々な可能性が広がる。どれだけのトップアスリートでも、いつかは現役生活に終わりが来る。そのための準備は、たとえ些細なことでも無駄にはならないはずだ。
「野球をやって来たという実績は、もちろん価値があります。ただ、いま痛感しているのはそれしかなかったら、引退すると本当に何も残らないということです。二軍にいる時は昼間に試合をして夕方に帰れば時間があります。そういう時間を活用して、何かに活かすのもありだと思います」