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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
戦力外ドラ1「投げるのは最後かも」、7打席で無安打「正直歯が立たなかった」…トライアウト“画面に映らない”人間模様の舞台ウラ
posted2023/11/16 17:40
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Yuki Suenaga
今年の12球団合同トライアウトは、日本ハムの二軍本拠地、ファイターズ鎌ケ谷スタジアムで行われた。前日、新鎌ヶ谷のビジネスホテルにチェックインしたが、ロビーには大きな荷物を持った選手らしき若者が数人いた。プロ野球時代、遠征では、球団がシティホテルをおさえてくれた。彼らにとっては、こういったこともまた初めての体験かもしれない。
500円のチケットは即完売したのだという
今年のトライアウトは、昨年までとは全く景色が違っていた。新型コロナが5類に移行されて初めての開催であり、制限がほぼなくなった。
球場周辺には多くのファンが駆けつけている。選手が車から降りるたびに、選手名鑑や色紙をもって近寄っていく。サインを書いてもらおうとしているのだ。元選手のスカウトや球団関係者にもファンが群がって、サインを求めている。
トライアウトの入場者は2145人、500円のチケットは即日完売したと言う。トライアウトに来る観客は、野球ファンの中でも本当にコアなファンだと思う。
この日の鎌ケ谷は朝から曇りがちで、底冷えがしていた。気温は朝9時の段階で11度とのことだったが、風も少しあってかなり寒かった。
トライアウト参加者はこの日になって参加が決まった1人を含めて59人、昨年の49人、一昨年の33人から比べて大きく増えた。確かに2次にわたる戦力外通告期間には「こんな選手も!」と思う顔ぶれが戦力外リストに載っていた。
10時、選手がグラウンドに出てキャッチボールを始めた。元気な声も出ている。もちろん悲壮感もあるのだが、何か吹っ切れたような明るい表情の選手も多い。
10時半、シートノックが始まる。これがトライアウトの「本番」だ。参加選手が増えたこともありカウント1-1の設定から投手と打者が対戦する。
オリックスの中継ぎで活躍した吉田のスライダー
最初に目を引いたのは2番手で上がったオリックスの吉田凌だ。