「4回転トウループは失敗することも多いので、もう切り替えるしかないな、と。普段から、4回転のあとで切り替えて失敗しない、という練習をしてきていました。だから『昨日は自分の練習を信じられなかったけれど、今日は自分を信じよう』と思えたんです」

　すぐに立ち上がると、続く「3回転ルッツ＋3回転トウループ」を決める。そこからは、“いつも通り”のパーフェクトの演技。手を優しく天に向かって差し伸べるフィニッシュポーズで締めた。

　スタンディングオベーションのなか、笑いながら首をちょっとかしげた。

「自分では納得していませんが、これくらいの演技でまとめられたのは良かったのかなと思いました」

　得点はフリー137.99点、総合201.33点での優勝。見事な逆転劇だった。初めての緊張の恐怖とどう向き合ったのか聞かれ、笑顔で返す。

「まず、昨日のことを忘れたこと。そして先生たちに励ましてもらえたことかなと思います。『自分を信じて』とか『思い切りやって』とか、色々と言葉をいただいて。自分がやってきたことを信じることができました」

　15歳になって初めての試合。ショートで初めての恐怖を体験し、フリーでは切り替えをやってのけた。

「4回転以外のジャンプはいつもと同じように出来たことは、ショートが悪くても切り替えて出来るんだ、という良い経験になりました。これからもしショートで失敗しても、この経験があるので、慌てることなく切り替えていけるので、良い経験になったと思います」

　思えば、浅田真央も同じ15歳で、初めて緊張を経験した。怖いものなしでシニアの05年GPファイナルを制したあと、06年の世界ジュニア選手権で、未体験の緊張に襲われたのだ。かつての天才少女達が経験してきたステップの1つに、島田も来た、ということなのだろう。

15歳で初めて感じた“緊張感”と“手応え”

　見事な全日本ジュニア3連覇。ユース五輪の代表に選ばれ、12月末の全日本選手権への推薦出場も決まった。12月8日からは、連覇のかかるジュニアGPファイナルも控えている。

「ファイナルの目標は、順位でいったら優勝なのですが、優勝でも、自分が納得行く演技をすること。今回、ショートもフリーも納得が行かなかったので、すぐにリベンジの試合があるのはすごくありがたいことです。今回失敗してしまったところを次は絶対に失敗しない、強い気持ちで臨みます」

　でも……といってこう付け加えた。

「私が目指しているのは、今季とか次の試合で成功したいとかではなくて、これからもずっと大きくなってからも成功し続けていきたいという目標です」

　15歳で初めて感じた「人生一度の大会」を目指す緊張感。そして乗り越えた手応え。それは、島田がスケート人生の目標とする2030年の五輪へと繋がっていくことを予感させた。