「明日のフリーは最終滑走でもないし、追い抜かす立場です。緊張に勝てるように、自分を信じて滑りたいと思います。フリーで巻き返したいと思います」

　そして大技の4回転トウループとトリプルアクセルについて聞かれると、迷いなく答えた。

「もちろん入れる予定です。紀平梨花さんは15歳のときにトリプルアクセルを2本入れているのを、小さいころテレビで見てきました。やっぱり私も（トリプルアクセル1本ではなく）4回転とトリプルアクセルをそろえたいと思います」

　最後にもう一度、言い聞かせるように言う。

「調子が悪いわけではないのは分かっているので、気持ちを切り替えたいと思います」

　4位発進でショックを受けるよりも、前を向こう。そんな決意が言葉の端々から伝わってきた。

　翌日のフリー。ショート4位の島田の滑走順は、6人グループの3番目となった。

「最終滑走だと、6分間練習のあと一回靴を脱いでアップし直すことが出来るんです。でも3番目だと微妙な順番で、靴を脱ぐか脱がないか、どうしようかな、と考えました。でも、慌てて試合に臨むのは良くないかなと思ったので、脱がずに調整しました」

　この日の滋賀県の外気は10度を切る寒さ。6分間練習のあとは、その場で足踏みやジャンプをして、体が冷えるのを防いだ。

後悔しないように…

　そして迎えたフリー本番。リンクサイドの濱田コーチから送り出された島田は、強気の笑顔だった。演技冒頭のトリプルアクセルを勢いよく決めると、心の中で一気に色々なことを考えた。

「いつもの試合にも増して、2本成功したいという気持ちが強かったので、まずはトリプルアクセルを成功出来て良かったなと思いました。でもすぐに次に切り替えようと思いました。昨日のショートを振り返ってみたら、緊張で思い切り行かなかったことを後悔したので、今日は『失敗するとしても思い切り行って後悔しないように』と。それで、スピードを上げていきました」

フリーの演技　©︎AFLO

　なめらかなスピードに乗って、4回転トウループを踏み切る。むしろ氷の硬さに対してスピードがありすぎて、高さを出せずに転倒。壁にぶつかってしまった。

「今日は自分を信じよう」

　ここで考えたのは、前日とは真逆のことだった。

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