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「いつもと何かが違う」フィギュア島田麻央15歳が初めて感じた恐怖…“天才少女”はいかに乗り越えたのか?「自分を信じようと思えたんです」
 

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野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

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posted2023/11/23 17:05

「いつもと何かが違う」フィギュア島田麻央15歳が初めて感じた恐怖…“天才少女”はいかに乗り越えたのか?「自分を信じようと思えたんです」<Number Web> photograph by AFLO

ジャパンオープン、1日限りの“現役復帰”で見事な演技を披露した宮原知子

「いつもと何かが違う」

 技としては成功しているのに、そう感じてしまう。演技中に弱気になるのは初めてのこと。混乱したまま次のジャンプへの助走が始まる。ここから一気にスピードを増して、次の「3回転フリップ+3回転トウループ」に繋げるはずだったが、

「どんどん体がこわばっていきました」

ショートの演技後、目頭をおさえながら…

 3回転フリップは、踏み切りでタイミングが合わず、着氷がやや乱れた。続けて3回転を跳ぶのは無理でも、落ち着いていれば2回転ジャンプはつけられる程度のミスだった。だが、とっさに身体が反応せず、連続ジャンプを跳ばずに終わった。

「3回転フリップで失敗するのは、練習でもなかなか無かったので……。しかも連続ジャンプをつけられないという経験は無かったので、そこで落ち込んでしまいました」

 どの選手も「3回転+3回転」の1本目で乱れたときに「3回転+2回転」にとっさに切り替えるのは普通のこと。島田の場合は普段あまりにもミスをしないため、心の準備が出来ていなかったのだ。

 演技後半は軽快なステップを詰め込んだ見せ所のはずだったが、笑顔が湧いてこない。「ショックをひきずってしまい、表現力もいつもよりは出来なかったと思います」

 演技を終えると、目頭をおさえながらリンクサイドに戻った。

 ショートのルールでは、連続ジャンプが必須要素なため、単発になった場合は出来栄え(GOE)で、転倒したのと同じ「−5」となる。自己ベストより10点以上も低い63.34点がマークされると、小さくうなずいた。

 まだ15歳。ショックで泣き出してもいいくらいの年齢だが、島田は違った。冷静に原因を分析し、涙を拭ってから、メディアの前に立った。3連覇がかかる緊張か、と聞かれると、そうではないと首をふる。

「全日本ジュニア3連覇ということよりも、ユースオリンピックに出たいという気持ちのほうが緊張の原因でした。これまでも順位や結果を目指す試合はあったんですけど、こんなに緊張したことはなかったです。ユース五輪は4年に1度なので『出られるチャンスも1回だけ』と思っていたので、絶対に出たいという思いがありました。それが、いつもと違った部分です。ジュニアGPよりも、国際大会よりも緊張しました」

 ユース五輪の代表枠は2枠。ジュニアGPと、この全日本ジュニアの成績を考慮して、代表が決定する。対象年齢が15歳から18歳のため、チャンスは一度しかない大会だ。島田にとっては、2026年の五輪に年齢規定で出場できなくなった経緯もあり、このユース五輪は、“五輪”と名のつく逃すことのできない大会だった。

「4回転とトリプルアクセルをそろえたい」

 心の魔物に気づいた島田は、落ち着いた表情で宣言する。

【次ページ】 「4回転とトリプルアクセルをそろえたい」

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