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「いつもと何かが違う」フィギュア島田麻央15歳が初めて感じた恐怖…“天才少女”はいかに乗り越えたのか?「自分を信じようと思えたんです」
posted2023/11/23 17:05
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
AFLO
怖いもの知らずの天才少女が、初めての恐怖と戦った。
滋賀県立アイスアリーナで開かれた、2023年全日本ジュニア選手権(11月17-19日)。3連覇がかかった島田麻央(15)は、そのショートプログラムの直前、小さく息を吐いてスタートのポーズをとった。レディー・ガガの軽快な曲で、強気の女性を演じるプログラム。しかし、連続ジャンプでの痛恨のミスがあり、自己ベストを10点以上も下回る63.34点での4位発進となったのだ。
全日本ジュニア3連覇をかけた試合
島田が初めて感じた、試合本番の恐怖。そして、フリーで見せた天才の意地。2日間のドラマを振り返った。
過去に、全日本ジュニア選手権で3連覇を果たしたのは、荒川静香と安藤美姫の2人。日本を代表する元祖天才少女であり、それぞれ、トリノ五輪金メダル、世界選手権2度の女王という称号を持つ。島田にとっては、荒川と同様に中学1、2年で大会を連覇し、今回が3連覇をかけた試合だった。
「調子は上がってきています」
試合に向けて、島田には手応えがあった。9月のジュニアGP大阪大会では、ショートで自己ベストの73.78点をマーク。フリーではトリプルアクセルも成功させ優勝。独壇場ともいえるシーズンを過ごしてきた。
ショートは特に自信があった。夏場のアイスショーでは何度も演じ、不安な要素は1つもない。レディー・ガガの音楽に乗って、楽しく滑るだけでよかった。
「自分の出番の前、氷に降りて滑り始めたら、どんどん緊張が高まっていきました。そして名前が呼ばれたら、一気に緊張してしまいました」
濱田美栄コーチが両手を握り、言葉をかけても無表情のまま。いつもなら笑顔でリンク中央まで滑っていってから、演じる“強気の女”らしく真剣な表情に切り替えるが、この日は、ただ“笑顔のない顔”のままスタートを迎えた。
「いつもと何かが違う」
演技冒頭のダブルアクセルは、ウォーミングアップのような技。成功するのが前提で、着氷を決めたあとジャッジをにらみつける振付けも入っている。しかし着氷した瞬間、いつものスピード感がなく、目線がさまよった。