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「ボミさんに憧れてゴルフを始めた」異例の引退サプライズ…韓国人イ・ボミ(35歳)はなぜ日本で愛された? 女子ゴルフ人気低迷の危機を救った“笑顔”
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byWataru Murakami
posted2023/11/17 06:00
実力だけでなく、その明るさで絶大な人気を集めたイ・ボミ(35歳)。多くの若手ゴルファーたちの羨望の的になった(写真は2015年)
ツアー通算3勝の“プラチナ世代”吉田優利は「テレビでジュニアの頃から見ていて、ずっと憧れでした。強くてかわいいボミさんが大好きでした」と話していた。
20歳の竹田麗央は「小学生の頃にボミさんを見てプロゴルファーになりたいと思いました」と語り、21歳の佐久間朱莉も「私もボミさんに憧れてゴルフを始めました」と話す。さらに今季4勝の19歳、櫻井心那も「ボミさんに憧れてプロになろうと思いました」と告白した。
昨季2勝の20歳、川崎春花は「小学生の頃にいただいたサインを今も部屋に大切に飾っています」。また21歳の仁井優花は「中学生の時に写真を撮っていただきました」とメッセージを残していた。23歳の上野菜々子も「アマチュアのころボミさんの真似をしてパターを買った」という逸話を披露していた。
いずれもイ・ボミの姿を見てゴルフを始めた世代。プロになったあと直接的な交流はなくても、特に20代の選手たちにとってはプレーと笑顔で大きな影響を与えた選手だったことがよくわかる。
受け継がれる“ボミイズム”
もちろんイ・ボミとしのぎを削った同世代の選手たちも、日本ツアーへの貢献度の高さを肌で感じていた。
同い年の菊地絵理香は「ボミがいたおかげで日本ツアーが盛り上がって、みんながんばれたと思います」とメッセージを送っていた。ツアー通算7勝で2019年に引退した佐伯三貴は「13年前に来たときはすごくかわいくて、ゴルフがうまくてやきもちを焼くくらいうらやましかった。日本のゴルフ界のために多大なる貢献をしてくれた」と振り返る。2019年賞金女王の鈴木愛は「何度か優勝争いしたこともあるのですが、本当に強いと思った選手の1人です。絶対に勝てないなと思った試合が何度もあったので、私も練習をもっとがんばろうと思えました」と話していた。
有志プロが集まったサプライズセレモニーを見ながら感じたのは、人の心を動かすことに、人種や国籍の壁は必要ないということだ。特に158センチと小さな韓国人選手が、多くの日本人の心をわしづかみにした。それは積極的な交流を意識的にしたわけでなく、人として大切なことをイ・ボミが行動で示し、実践しただけのことかもしれない。
ちなみに最近、現場に行くと人気プロの吉田優利などファンサービスを積極的にする選手が増えていることにも気が付く。日本の女子ゴルフ界に根付いた“イ・ボミイズム”は、次の世代にしっかりと受け継がれている。