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「ボミさんに憧れてゴルフを始めた」異例の引退サプライズ…韓国人イ・ボミ(35歳)はなぜ日本で愛された? 女子ゴルフ人気低迷の危機を救った“笑顔”
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byWataru Murakami
posted2023/11/17 06:00
実力だけでなく、その明るさで絶大な人気を集めたイ・ボミ(35歳)。多くの若手ゴルファーたちの羨望の的になった(写真は2015年)
百歩譲って“親譲りの性格”だとしても、支えてくれる人たちを大切にする一つひとつの行動は、日頃からある程度、意識していないとできないことだろう。そうした姿勢はライバルである多くのツアープロにも伝わっていたと思う。
驚いたのは「NOBUTA GROUPマスターズGCレディース」2日目終了後、サプライズで行われたイ・ボミの“引退セレモニー”だった。大会出場108選手のうち、50人以上の選手や関係者がクラブハウス内に集まり、ピンクの応援Tシャツを着て花束を手渡し、涙を流す光景は日本での出来事とは思えないほどだった。
イ・ボミの現場マネージャーの李彩瑛(イ・チェヨン)さんは「ほとんど話したこともないプロも残っていたんですよ」と驚いていた。俳優で夫のイ・ワン氏も「これだけ多くの日本の選手たちが残って、花束やプレゼントを渡したりする姿はとても不思議でした。一つ言えば、みんなライバル。韓国ならこういうことは起こるだろうかとも思いました。どれだけ愛されていたのかを改めて知りました」と話した。
その中には予選を通過し、翌日に試合を控えている選手もいたわけだが、それでも先に帰らず、イ・ボミがホールアウトする夕方まで待っていた。日本の選手たちが一人の韓国人選手のために祝福する姿を見て、それだけ影響を与えた選手であると改めて知ることができた。
イ・ボミが後悔する“ライバル”との交流
そんな愛されたイ・ボミだが、後悔もあるという。
「もっとたくさんの日本の選手たちと交流する機会が持てればよかった。そもそもツアーで戦っている同士ですし、試合が終わってからは翌日に備えてそれぞれ過ごす時間やスタイルが違います。私もチームで動いていたので、他の選手とご飯に行く機会はなかったんです。それに私がそもそも積極的に交流するタイプかと言われれば、そうでもなく。近寄りがたい雰囲気があったのかも(笑)。お互いに気を使って遠慮する部分は大いにあったと思います」
ツアーで戦う中で会話を交わしたり、一緒に写真を撮ったりする過程で仲良くなる選手はたくさんいたが、意外にもほとんど選手同士で食事に行ったことはなく、私的な交流もほとんどないと話していた。実際、全盛期の頃のイ・ボミは指定練習日のラウンドもほぼ1人で回ることを徹底していた。プロとして戦う姿勢が、少し近寄りがたい雰囲気を醸し出していたのかもしれない。
それでもイ・ボミの“キラキラ”した姿に憧れた選手たちは多い。JLPGAオフィシャルのインスタグラムには、引退するイ・ボミに向けてのメッセージで「強くてかわいい姿に憧れていた」と告白したり、様々なエピソードを語る選手がたくさんいた。