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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
戦力外ドラ1「投げるのは最後かも」、7打席で無安打「正直歯が立たなかった」…トライアウト“画面に映らない”人間模様の舞台ウラ
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byYuki Suenaga
posted2023/11/16 17:40
今シーズンも開催された12球団合同トライアウト。様々な人間模様が交錯する
中継ぎ投手として、縦横のスライダーを駆使して活躍した。今季も19試合に投げている。140km/h台とキレの良い横スラに対戦する打者は手が出ない。120km/h台の縦スラも決まり、オリックスの同僚・釣寿生を三振、東海大相模の先輩でDeNAの田中俊太を三振、中日の伊藤康祐に四球という結果。今すぐにでも使えそうな印象だった。
日本シリーズ前日に戦力外通告を受けたが、シリーズは「いちファンとして食事をしながら楽しみながら見ていた」そうだ。先輩である田中俊太との対戦は「まじか」と思ったが、「当てないように頑張ります」とあいさつをして、理想的なピッチングができたと言う。この選手の場合、シーズン通して活躍できるかが、獲得を検討する側としての課題なのだろう。
かつてのドラ1、最多勝投手の投球内容は?
6人目でソフトバンクの2015年ドラフト1位・高橋純平が上がる。速球とフォークを駆使する正統派である。2019年には45試合に登板して17ホールドを挙げたが、ここ2年、一軍登板がなかった。オリックスの園部佳太に左前打を打たれ、西川僚祐(ロッテ)は空振り三振。しかしソフトバンクの同僚、早真之介には死球をぶつける。早はかなり痛そうな様子だった。
「投げるのは最後かもしれない、という気持ちで投げた。全球種を見せようと思っていたが、まっすぐ、カット、スライダー、全部見せられた」とのこと。ただ死球は「左バッターでクイックにタイミングが変わったことで、やっぱりどうしても球を引っかけるという悪い癖が出た」とのことだった。
8人目に広島の薮田和樹が上がる。2017年に15勝、最高勝率のタイトルを獲得したものの、ここ数年は成績が低迷していた。筆者は今年、ウエスタン・リーグで見ている。西武の中山誠吾に四球を与え、阪神の高山俊を三振、オリックスの中川拓真も歩かせる。テークバックが小さくなっていた印象だ。速球は最速144km/hだった。
薮田は「寒い時期に投げる難しさはある」としながらも「まっすぐが投げられるところをアピールしないといけなかったかな」と反省。「その中でもやっぱりまだ三振が取れるっていうところはすごく大きい」と締めくくった。
独立Lからプロ→戦力外…「頭が真っ白」になったが
個人的に思い入れがあるのが、薮田に続いて上がった広島の行木俊だ。
2020年ドラフト5位。徳島インディゴソックスから入団。筆者はドラフト前に話を聞き、ドラフト当日の記者会見にも立ち会った。