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イチロー38歳の苦悩「難しい時間を過ごしています」渡米後はじめて“ベンチの時間が増えた”ヤンキース時代…私が見た“背番号31”の戸惑い
posted2023/11/06 11:05
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph by
Naoya Sanuiki
10年前、イチローはニューヨークで2年目のシーズンを終えた。38歳で移籍したヤンキース時代の背番号は51でなく31。「日米通算4000安打の達成」「出場機会の大幅減」「結果を出せど変わらない状況」……栄光と苦悩に包まれたヤンキース時代を取材した「イチローの真実」。〈全2回の#1/#2へ〉
「最近の一日は、球場に来てまずラインナップがどうなっているのかを見る。7番くらいにいることが多い時期があって、ラインナップカードを下から見る癖がついてるんですよね。下にないと今日はないのか……と思って上の方を見ると、2番に入っていたり、ときどき1番にいたりということがあるんですけども」
イチローがこう語ったのは、2013年8月21日。日米通算4000安打を放った試合後の、会見の席だった。
ヤンキース2年目…はじめて“出場機会の大幅減”
前年の7月にマリナーズからヤンキースにトレードで移籍したイチローは、ニューヨーク2年目のこのシーズン、4番目または5番目の外野手という位置づけだった。当時のジョー・ジラルディ監督も4月10日の時点で「外野陣はローテーションを回して起用していきたい。イチには何日間かごとに休みを与える」と話していたことからも、当時39歳だったイチローの出番を減らすことを、成績とは関係なく開幕当初から決めていたようだった。デビューした2001年から2012年までのイチローは出場試合のうちスタメンが93%を下ることはなかったが、このシーズンはスタメンが出場試合の85%と機会が減り、打席数は663から555まで減少。打席数が600を割ったのはそのシーズンが初めてだった。デビューからほぼ休まず試合に出続けてきた選手にとって、それはあまりに大きな立場の変化である。簡単に適応できるものではないことは、想像に難くなかった。