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イチロー38歳の苦悩「難しい時間を過ごしています」渡米後はじめて“ベンチの時間が増えた”ヤンキース時代…私が見た“背番号31”の戸惑い 

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水次祥子

水次祥子Shoko Mizutsugi

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photograph byNaoya Sanuiki

posted2023/11/06 11:05

イチロー38歳の苦悩「難しい時間を過ごしています」渡米後はじめて“ベンチの時間が増えた”ヤンキース時代…私が見た“背番号31”の戸惑い<Number Web> photograph by Naoya Sanuiki

2012年シーズン途中から2年半にわたってヤンキースでプレーしたイチロー

イチローほどの選手が…スタメンは当日に

 イチローが球場入りするとまずラインナップカードをのぞき込むのを、筆者も毎日見ていた。そのカードはクラブハウス入口の扉の内側に貼ってあり、選手は球場入りするとその入口を通ってクラブハウスに入るので、そこでラインナップを確認する。

 ただ同時に報道陣が利用する出入り口でもあるので、記者たちが試合前にクラブハウスに入ると、やはり同じようにそこでスタメンを確認した。

 選手と記者が同じ場所でその日のスタメンを知る。選手の集合時間よりも報道陣にクラブハウスが開放される時間の方が早いことも多いため、むしろ記者たちが選手本人より先にスタメンを知ることもあった。イチローほどの選手が記者と同じ場所で同じようにスタメンを確認しなければならないというのは、どこか違和感があったのも事実だ。

背番号31の本音「難しい時間を過ごしています」

 イチローがヤンキースに所属した2012年7月23日から2014年シーズン終わりまでの2年半は、トレードマークともいえる背番号「51」と別れを告げ「31」を着けていた唯一の時期でもある。51番はヤンキース一筋に16年間プレーしたバーニー・ウィリアムズ外野手の背番号だったため、イチロー自身が着用することを遠慮し、代わりに選んだのが31番だった。

 その「31番イチロー」時代は、栄光に包まれていたと同時に苦悩も抱えた複雑な時期だった。

「ラインナップカードを見るまでは、先発でゲームに出られるかどうか分からない。ずっとそうなんですよね。もちろん出発前に家で出来ることをやってここに来るんですけども、なかなか安定した気持ちの中でここに来ることはできない。今日もそうでした。ラインナップカードに自分の名前があったときに、自分にスイッチを入れるという感じですかね、自分の中で。なかなか難しい時間を過ごしています」

 4000安打達成後の記者会見で、イチローはそんな胸の内も明かしていた。

【次ページ】 やはり別格だった“イチロー人気”

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