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イチロー38歳の苦悩「難しい時間を過ごしています」渡米後はじめて“ベンチの時間が増えた”ヤンキース時代…私が見た“背番号31”の戸惑い
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byNaoya Sanuiki
posted2023/11/06 11:05
2012年シーズン途中から2年半にわたってヤンキースでプレーしたイチロー
やはり別格だった“イチロー人気”
もちろん、屈指の人気を誇り長い歴史と伝統を持つヤンキースという球団で、イチローがより一層輝くこともあった。日米通算4000安打を放ったのは本拠地ヤンキースタジアムでのブルージェイズ戦だったが、イチローが1回の第1打席に入っただけで、スタンドから大きなイチローコールが起こり、それは打席が続く限り途切れることがなかった。ナックルボーラーとして活躍し前年にサイ・ヤング賞にも輝いた先発のR・A・ディッキーから左前打を放つと、観客が総立ちで熱い歓声と拍手を送り、祝福の喧騒が球場全体を包んだ。ホーム側のベンチからはチームメートやコーチらが出てきて、一塁ベースに立つイチローと1人1人ハグをして祝った。そのため試合はしばらく中断した。この瞬間は今もファンの記憶に残る名場面の1つになっている。
イチローが加わった当時のヤンキースにはチームの第15代キャプテンを務め2020年に野球殿堂入りしたデレク・ジーターと、通算696本塁打を放ったアレックス・ロドリゲスが所属しており、このスーパースター3人のそろい踏みは壮観だった。2012年9月22日のホームでのアスレチックス戦では1番ジーター、2番イチロー、3番A・ロッドと打線上位に3人が名を連ねるスタメンが実現し、その華やかさは特別な空気を醸し出し、イチロー本人でさえ試合の翌日にこう語っていた。
「それは悪い気、しないですよ。昨日はアレックスの前で敬遠されたわけだからね。こういうことは初めてのことなんでね。それは、今までの僕のキャリアではないことだからね」