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甲子園の風BACK NUMBER
夏の甲子園3試合で打率4割、2本塁打の大活躍…《大阪桐蔭撃破の立役者》履正社「プロにこだわる」“苦労人”4番打者・森田大翔に指名はあるか?
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/10/24 11:01
U18日本代表メンバーにも選ばれた履正社の主砲・森田大翔。プロには強いこだわりを見せるが、ドラフトでの運命やいかに
2年夏の大会はベンチを外れたが、体の部位の動きを意識したトレーニングなどを自主的に行った。それでもなかなか結果が出ず、時間と共にもどかしさだけが重なっていった。
「1年生の頃は、何がダメで、じゃあどうすればいいのか自分を分析できていなかったです。それに、1年秋にベンチに入れたので、2年春も夏も入れるだろうという甘さもあったと思います」
新チームとなった昨秋「3番・三塁」にようやく定着し、公式戦10試合で打率は.563。4本塁打を放ち、履正社打線の顔となった。さらに大舞台で自分の地力を……とセンバツで意気込んだが、自身の打撃は4打数1安打。高知の投手陣の継投にかわされ、チームは2-3で敗れた。
その後、チームは春の大阪大会4回戦で敗れ、重たい空気が立ち込めていった。夏に向け再出発を誓い、好投手を中心に対外試合を増やして実戦を積み上げていこうとした矢先、6月に左手の有鈎骨を骨折し戦列から離れることになった。何度も下を向きそうになったが、手首が使えない間は体幹トレーニングなどで体作りに徹した。
ケガの功名が生んだ「本塁打量産」
「夏の大会前は練習試合に1試合しか出られなかったんです。春からはずっとバットを振ってきていたんですが、ケガをした間は体を鍛えることに重点を置けたことが(大阪大会の3本塁打に)繋がったと思います」
とはいえ、夏の大阪大会初戦で共に中軸に座る坂根葉矢斗捕手が右手小指を負傷する緊急事態にも遭遇した。坂根がスタメンから外れて以降、森田が4番に座った。チームとして大きな痛手になったが「最後の夏なので周りの期待がどうこうよりも自分ができることをしっかりやり切るしかないと割り切りました」とネガティブになることなく自分のスイングを心掛けた。
向かい風が吹いても、自分の信念だけは曲げずに夏を完遂しようと腹を括った。前だけを見続けることができたのは理由があった。
「ずっとプロに行きたいという気持ちがあったので。自惚れという訳ではないのですが“僕が打たなかったらチームに勢いがつかない“くらいの気持ちで打席に立っていました。6月にケガをした時も、夏の大会は初戦から出たいと多田先生(監督)に相談していたんです」