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甲子園の風BACK NUMBER
150kmの速球でも、抜群の変化球でもなく…大阪桐蔭・前田悠伍がW杯で気づいた“自分の武器”「ドラ1で行きたい気持ちはある」高校最強左腕はどのチームへ?
posted2023/10/24 11:00
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
JIJI PRESS
9月に行われたU-18W杯の台湾との決勝戦のことだ。
初回に2安打を許すも、続く打者を連続三振に斬ってピンチを脱し、以降も台湾の強打者を圧倒していく前田悠伍(大阪桐蔭)の姿をベンチから見ていた森田大翔(履正社)は、こう思ったという。
「いつも自分たちが見ている前田やなって。大阪で自分たちはこんな風に圧倒されていたなって思いました」
“履正社と大阪桐蔭”という構図で見ればまさにそうだった。
特に履正社は21年秋、22年春、夏、さらに秋と4季連続で前田に完璧に封じ込められてきた。そのうち森田が直接対決を果たしたのは昨秋のみだが、前田の凄味を最も近くで感じてきた。
速いストレートと得意のチェンジアップで惑わせ、三振の山を築く。U-18W杯でも3試合で先発し、計16回2/3イニングを投げ1失点。奪った三振は合計14個を数えた。舞台が大きくなっても得意のピッチングスタイルで相手をマウンドから見下ろす姿は、かつての前田そのものだった。
前田にとって、最上級生となった春から夏までの2023年シーズンは実に歯がゆい日々だった。
日本一を目指したセンバツではベスト4で報徳学園に敗れ、以降はコンディション不良で春の公式戦のベンチから外れた。1年秋からフル稼働してきた左腕にとって、勤続疲労もあっただろう。悲鳴をあげていた部位のケアに加え、時間を掛けて1から体を作り直し、最後の夏に賭けた。
高校最後の夏の甲子園は出場できず
だが、本来の姿を見せられぬまま最後の夏は終わった。大阪大会決勝で、森田擁する履正社に0-3で敗れたのだ。
決勝戦を終えて、一度滋賀県の実家に帰省。ゆっくりと体を休めてから、次の舞台に向けて始動した。8月上旬時点ではU-18日本代表に選出されるかは未定だったが、選ばれることを信じて夏休みの半ばに学校に戻り、練習を再開した。
「負けてからは悔しい気持ちの方が大きかったですし、後悔もあったんですけれど、ずっとそのままでも前に進めないので。その時点ではまだ(日本代表に)選ばれると確定していませんでしたけれど、選ばれることを信じてずっとやってきました」