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南半球でキムチ鍋、“勝負飯”のカレーを急きょ…ラグビー日本代表に帯同する西芳照シェフの料理が愛される理由〈なでしこ秘話から紐解く〉
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/09/17 11:01
桜戦士の胃袋を支える西シェフ
ニュージーランドでキムチ鍋?
ベースキャンプ地のニュージーランド・クライストチャーチから会場となるダニーデンにチームは移動し、試合に向けて程よく緊張感も高まっていた。
「えっ! これ何、何、何~!」
練習を終えてからの夕食会場に、女子の弾んだ声が重なった。テーブルに用意されていたのは、カセットコンロと日本の鍋だった。
ニュージーランドでまさかのキムチ鍋だ。南半球は冬。このサプライズメニューに選手たちのテンションが爆上がりしたことは言うまでもない。
このときの話を西に聞くと、うれしそうに口もとを緩めた。
「テーブルから“わーっ”とか“すごーい”とか声が上がっていて、それだけで出して良かったなって。寒いし、いいタイミングでと思っていました。欲しかったキムチの種類ではなかったけど、選手のみなさんが喜んでくれて何よりでした」
チャーター機移動が生んだ幸運
現地でパッと思いついたわけではない。テーブルで火を扱うにはホテル側の許可を取りつけなければならない。そしてカセットコンロや鍋を自分で用意しなければならない。
出発前、お米、納豆、佃煮など日本から持ち込む食材の準備は済ませていた。それが出発の3週間ほど前、チャーター機によるニュージーランド移動が決まり、荷物をもっと詰め込めることになった。