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南半球でキムチ鍋、“勝負飯”のカレーを急きょ…ラグビー日本代表に帯同する西芳照シェフの料理が愛される理由〈なでしこ秘話から紐解く〉 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2023/09/17 11:01

南半球でキムチ鍋、“勝負飯”のカレーを急きょ…ラグビー日本代表に帯同する西芳照シェフの料理が愛される理由〈なでしこ秘話から紐解く〉<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

桜戦士の胃袋を支える西シェフ

 なでしこジャパンが輝いていた。何度も逆境をはね返して世界一の座に就いた。東北を元気にしたいとの彼女たちの思いは伝わった。自分も頑張ろうと思えた。震災から半年後、Jヴィレッジ内に作業員向けのレストランを開いた。温かいものといってもレトルト食品くらいしかなかった作業員に、栄養のある温かい食事を提供したいとの思いからだった。

 西は言う。

「(なでしこジャパンに対する)思い入れと言われたら、もちろんあります。去年、インドでのアジアカップに同行させてもらいましたけど、予算やいろんな制限もあって十分に満足させてあげられたわけではなかった。だからこそ今回、勝ち上がっていくために、やれることはすべてやっていきたいなって。実は鍋料理を思いついて、鍋やカセットコンロの購入は(協会側に)事後報告だったんです。認められなかったら、自腹でもいいかなって。認めていただいて良かったですけど、キムチ鍋つくって負けていたら“西のヤツ、何やってんだ”って言われていたでしょうね、多分(笑)。

 準々決勝でスウェーデンに敗れて、みんな目を腫らして帰ってきました。大会が始まる前まではそこまで期待されていなかったじゃないですか。選手のみなさんは悔しかったと思います。それでも素晴らしい戦いで勝っていって、本当に立派でしたよ」

涙、涙の選手たちが笑顔に

 スウェーデンとの試合後はフォーとすき焼きを並べた。泣き顔から次第にこの先、また頑張っていこうと前を向く顔にみんななっていた。選手たち一人ひとりと再会を誓うように握手した。

 西もまた選手と一緒になって戦っていた。

 いいパフォーマンスを発揮してもらいたい、勝ってもらいたい。選手ファーストでありったけの思いを注いだ魂の料理だからこそ、選手たちの心に届き、溢れるばかりのエネルギーとなる。サムライブルーも、そしてなでしこジャパンも、それは同じであった。

【次ページ】 大男たちの胃袋を支える

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