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南半球でキムチ鍋、“勝負飯”のカレーを急きょ…ラグビー日本代表に帯同する西芳照シェフの料理が愛される理由〈なでしこ秘話から紐解く〉
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/09/17 11:01
桜戦士の胃袋を支える西シェフ
西は2011年に東日本大震災が起こる前まで福島の浜通りにあるナショナルトレーニングセンターのJヴィレッジで総料理長を務めていた。なでしこジャパンが強化キャンプを張ったこともあり、鍋料理が人気だったことを思い出した。
カセットコンロは売っていても、季節が季節だけに寄せ鍋ができるようなお目当ての鍋がなかなか見つからない。置いてあるのは店一軒に大体ひとつとあってまとめ買いもできない。サンプルしかなければ、それを値引きしてもらって購入した。出発前日になって全部そろえることができた。
「選手のみなさんがまずはしっかり試合に臨んでもらうために食事でサポートをすること。そのうえで食事のときはリラックスしてもらえる環境であることも大切です」
小グループでキムチ鍋を囲めば、当然コミュニケーションも多くなる。たっぷりと栄養を摂って、シメは雑炊。どのテーブルも盛り上がり、鍋はキレイにたいらげてあった。キムチ鍋の効果もあってか、コスタリカ代表との一戦に2-0と勝利している。一体感をより醸成する晩餐になったわけだ。
その後も鍋は、豆乳鍋やしゃぶしゃぶなどメニューを変えて登場している。味で目でサプライズで楽しませることで食卓にはいつもにぎわいがあった。
試合後のカレーライス…女子には?
西がチームから信頼される理由の一つに、杓子定規にならない臨機応変がある。
試合を終えた後の食事は、男子だとチキンと野菜がゴロゴロのカレーライスが定番だった。疲労回復には炭水化物がマスト。ただ選手たちは試合後のロッカーで用意されたおにぎりや干し芋を食して帰ってくるため、大体の選手がカレーライスを少量でとどめていた。
パートナーのシェフとともに毎日、食事の準備に追われているのだから試合日の夕食はカレーだと決めて、そのまま突き通せることだってできる。しかし西はそれでは選手の期待に応えられていないと思い、何かいいものがあるんじゃないかと考え込んだ。