先ほど述べたように、実戦形式のシートバッティングは危険なので禁止されていました。そこで僕は、ほかの選手が打っているときにケージの後ろに立ち、ピッチャーの投球に合わせて一球一球スイングしてイメージをつかもうとしていました。そこに矢野監督がやってきて、肩を叩きながら言ったのです。

「もう少しで試合に出られるから、がんばれよ」

　その言葉を聞いたときは、涙が出るほどうれしかった。気持ちが折れかけていたときだったのでなおさらでした。そのひと声で、再び前向きになることができたのを思い出します。

ファンからの温かい声援

　また、鳴尾浜には毎日、たくさんのファンの方々がやってきて、温かい声援を送ってくれました。毎朝、全体練習が始まる前に僕は外野でよく素振りをしていたのですが、なかにはその時間から見てくれている方々もいました。

「一日でも早く試合に出て、24番を取り返してください！」

　ファンがかけてくれる、そんな温かい言葉も大きな支えとなりました。そんな声援をもらうたび、感謝するとともに思いました。

「練習ではなく、試合に出ている自分を一日も早く見て、喜んでほしい」

　残念ながら、そのシーズン中の実戦復帰はならなかったけれど、身体や体力は着実に回復しているという自覚がありました、できることも、少しずつではあるけれど、確実に増えていました。

復帰直後の横田さん。鳴尾浜球場トレーニングルームにて　写真は『奇跡のバックホーム』P149より

大阪大学医学部附属病院（阪大病院）を訪問

　復帰して3年目を迎える2019年、亥(いのしし)年。年男の僕はもちろん、「今年こそ完全復活」という気持ちで自主トレ、そしてキャンプに臨みました。

　前年までの二軍監督で、その年から一軍の指揮をとることになった矢野監督は、就任会見の際、「期待する若手」として唯一僕の名前をあげてくれたと後で聞きました。

　前年の12月、髙山俊さん、熊谷敬宥(たかひろ)さんとともに阪大病院を訪問したとき、「がんばってね」「応援してるから」と逆に励まされ、力をもらいました。ずっと目が開かなかった人が懸命に僕の顔を見ようと目を開けてくれたり、歩くことができない人がサインをもらいに来てくれたり……信じられないことがたくさん起こりました。

ふたりで甲子園のお立ち台に立とうな

　年末に鹿児島に帰省すると、会う人会う人が「身体に気をつけて、がんばって」と声をかけてくれました。なかには見ず知らずの人もたくさんいて、うれしいと思うと同時にびっくりしました。

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