「あれ、本当に0−3で負けてるのかな？　って。みんながイケると思っていたし、僕自身もこれは逆転しそうだぞ、と本気で思っていたんですよ。それはたぶん、みんながやるべきことをしっかりやるという前提の上で、自分の結果だけにフォーカスせずにチームがどうすれば勝てるかということを体現した結果の空気感だと思うんですよ。僕がそれを一番感じたのは、やっぱり大谷選手なんです」

メキシコ戦後のベンチで。サヨナラタイムリーの村上宗隆に歩み寄る大谷翔平　©JIJI PRESS

「3番・指名打者」で先発した大谷は、第3打席の6回にレフト前ヒットを放つまで2打席無安打。それでも他の選手の打席や、守備の間にベンチで誰よりも声を張り上げる姿があった。7回には四球で出塁して吉田正尚の同点3ランを呼び込み、9回には先頭打者で二塁打を放ってヘルメットを飛ばして激走し、二塁の塁上では大きく手を振り回しながら雄叫びを上げ、チームメートを鼓舞した。

「守備が終わってみんながベンチに帰ってくると、大きな声を出して鼓舞していましたし、イケる、イケるって常にポジティブな声がけをしていた。それでみんなが、本当にイケるんじゃないか、っていう空気に変わっていった。劣勢でも絶対にイケるんだぞ、っていう空気感。自信というか信念というか、言葉で表すのは難しいんですけどね」

©Naoya Sanuki

　あの戦いから間も無く半年。所属のベイスターズは最終盤に向けた熾烈な上位争いを演じている。「当たり前のレベルが変わった」と話す経験を力に、大きく広がった視界の先に捉える未来図。今永は言う。

「あの時の大谷選手じゃないですけど、僕自身も何かそういう空気感を出せる選手に近づいて行けたらいいな、って。今はそう感じています」

＜前編から続く＞