セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
《142億円で強奪》「金の亡者。裏切り者」「信頼関係にヒビ」批判殺到の欧州王者イタリア→サウジ電撃移籍…大モメ監督人事の真相
posted2023/09/16 17:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Christopher Lee - UEFA/Getty Images
アッズーリ(イタリア代表の愛称)を率いてEURO2020を制した名将ロベルト・マンチーニが、8月28日、サウジアラビア代表監督に就任した。
「私はヨーロッパで歴史を作った。今度はサウジアラビアで歴史を作る」
なぜマンチーニは突然、地位も名声も投げ出したのか
現地報道によると、年俸は手取りで2500万~3000万ユーロ(約40~47億円)とされている。イタリア代表時代の400万ユーロ(約6億3000万円)と比べると、6倍から7倍以上にあたる破格の高待遇だ。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙いわく、2027年1月までの契約期間に受け取る総額は「9000万ユーロ近い」。日本円なら142億円強だ。砂漠の国のマンチーニは世界で最も高給取りの代表監督になった。
ただし、今、母国イタリアの彼を見る目は冷え切っている。つい数週間前までイタリア代表監督だったマンチーニへの評価は、欧州を制した名将から”代表チームを見捨てた裏切り者”へ一変した。
マンチーニはコロナ禍に苦しんだイタリアにEURO優勝で歓喜と希望をもたらした英雄であり、その後カタールW杯出場を逃しはしたが、なお絶大な人気を誇るカリスマ指導者だった。広告業界からも引っ張りだこでファッションブランドをはじめ、イタリア郵便株式会社や故郷マルケ州観光局のイメージキャラクターとしても好評を得ていた。甘いマスクの彼はロマンスグレーになっても青年らしさを失わず、国民にとって“永遠の若大将”だった。
ところが、マンチーニは突然、その地位も名声も投げ出した。一体何があったのか。
「強欲すぎ」「金の亡者」「カネで代表を裏切った」
青天の霹靂にイタリア・サッカー界がひっくり返ったのは、バカンスシーズン真っ盛りの8月13日のことだ。
国民的英雄の辞意表明はあまりに唐突で、国中に大きな衝撃と困惑をもたらしたが、すぐにサウジアラビアからの超破格オファーが背後にあったことが知れ渡ると、各メディアや庶民は一斉にマンチーニを非難した。
「カネで代表を裏切ったのか」
「強欲すぎる」
「金の亡者」
代表OBや重鎮たちも黙ってはいない。