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「なぜか町田だけ批判されますよね」禁断の移籍、ロングスロー、時間稼ぎ…J2首位チームに“賛否の声”、異例の転身・黒田剛監督はどう答える?
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/09/08 11:11
今季から町田で指揮を執る黒田剛監督(53歳)。昨季15位だったチームをどうやって変えたのか?
「ロングスローは世界を見渡しても珍しい戦術ではありません。欧州のトップクラスでもやっているチームは少なくありません。またJ1、J2でもかなりのチームがやっています。しかし、なぜか町田にだけ批判してきますよね(笑)。ルール上OKなわけで、もちろん批判される筋合いもありません。どこだって得意な選手がいるのであれば使わない手はないでしょう。もしポゼッションにこだわるのなら、それで結果を出せばいいわけで、ロングスローが自分たちのプランになかったとしても相手を批判するのは筋違いですよね」
競技スポーツである以上、勝利を目指すのが大前提。そのこだわりが強いことで、ときに誤解を招くこともある。しかし、黒田監督の姿勢や発想はプロとして当然に思える。
「(サッカーには)スキルが必要だと言われますが、なぜ必要かといえば、勝つためですよね。それこそ心技体という言葉がありますが、メンタル、スキル、フィジカルといずれも揃えて初めて勝ち切ることに繋がってくる。もしスキルだけを磨いたとしても、ほかが欠けていたら勝負事はうまくいかないから難しいわけです。
その点、私は高校年代で約30年間の指導者キャリアで磨いてきた勝負勘もあります。だからこそ、いまの町田の立場(順位)があるのかもしれませんね」
「藤田社長はホームには必ず顔を出してくれます」
今季から町田はオーナーでもあるサイバーエージェント社長の藤田晋氏が、クラブの社長兼CEOも兼任している。プロスポーツではオーナーが現場に介入することもよくある話。もちろんオーナー企業のバックアップが適切であれば、チーム強化にそれほど心強いことはない。町田の場合はどうだろうか。
「藤田社長はホームゲームには必ず顔を出してくれますし、私自身、頻繁ではありませんが、食事をしながら激励してもらったこともあります。ただ、町田にはフットボールダイレクターの原(靖)さんもいます。原さん抜きで私と藤田社長で話すことはよくないと考えています。それが組織の秩序ですから。なので、藤田社長と直接のやり取りは少ないですが、別に仲が悪いということではありませんよ(笑)。
藤田社長は適度に距離を取って接してくれますし、そういう意味で、現場のやりやすい環境を作っていただき感謝しかありません。会社とクラブ、それから現場、この三位一体のバランスのよさも今季の町田を象徴していると思います」
J2で長年戦ってきた監督たちにすれば、町田に首位を快走されている状況に悔しさを感じないわけはない。ただ昇格に向け、町田にいまのところ死角が見当たらないのも事実である。
<続きでは、町田の選手たちの本音「“黒田監督の改革”をどう感じている?」を聞いています。>
《続く》