甲子園の風BACK NUMBER
「根尾は直立不動、中田翔はカラオケ大会」吹奏楽部の“カリスマ監督”が明かす大阪桐蔭の歴代選手秘話…「毎回アウェーの雰囲気」という甲子園での“秘策”は?
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/22 11:03
ドラフトで阪神から指名を受けた際、吹奏楽部のメンバーと記念撮影する藤浪晋太郎
あの名曲の誕生秘話は…
大阪桐蔭の甲子園応援は、部の体制が整った2006年夏からスタート。中田翔(読売ジャイアンツ)が2年の時で、彼の打席では、当時強打者の応援曲として使っていたクイーンの『We Will Rock You』を演奏した。
浅村栄斗(東北楽天ゴールデンイーグルス)らが活躍した2008年夏からは、1回の攻撃時にオリジナルの『TOINコール』からスタートし、行進曲『サーカス・ビー』を演奏する現在のスタイルに。この年、自前のブラバン応援も力となり、大阪桐蔭は2度目の優勝を果たす。
「優勝したものの、翌年は甲子園に出られず、その後低迷期間が続きました。そこで2011年、『オリジナル曲を作ろう』と思い立ち、藤浪晋太郎(ボルティモア・オリオールズ)が3年の時に完成したのが『You are スラッガー』です。森友哉(オリックス・バファローズ)とのバッテリーで、春夏連覇を達成。甲子園応援にもとても力が入りましたね」
「オスティナート」の技法
『You are スラッガー』は、今では全国的に人気の、大阪桐蔭を代表するオリジナル応援曲。梅田氏からの依頼で、作曲家の杉本幸一氏が作った曲だ。杉本氏といえば、1988年の全日本吹奏楽コンクール課題曲『カーニバルのマーチ』の作曲者。サンバホイッスルが鳴り響く楽しい曲で、『You are スラッガー』が杉本氏の作曲と知った時には、「あの課題曲の作曲者だ!」と大変驚き、アルプススタンドで興奮したことを思い出す。
以前取材した際、杉本氏は同曲について「これまでにないロック調の応援曲を、というコンセプトで考えた」と話しており、同じフレーズを反復し続ける「オスティナート(ostinato)」という技法を用いて作ったことを聞いた。オスティナートとは、イタリア語で「頑固な」「執拗な」という意味を持ち、何度も繰り返される低音のフレーズが印象的だ。