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「あ、僕たちでも勝てるんだ」履正社“史上最強”への道は大阪桐蔭との“宿命の一戦”から始まった…「打倒奥川」で果たした夏の甲子園制覇
text by
釜谷一平Ippei Kamaya
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/08/07 17:07
2019年夏の甲子園決勝でエース奥川恭伸を擁する星稜を5-3でくだし初優勝を飾った履正社ナイン
「小深田や池田が下級生の時からスタメンを掴んだだけでなく、関本や大西らも早くからベンチ入りし、試合で結果を出していました。元々振る力があったこのメンバーが経験も積みながら成長して主力になっていって。あくまで2年秋の段階ですが、日本一になった一つ上の学年と比べても、力が上だったと思います」
2019年夏の甲子園では、史上初の「盗塁ゼロでの優勝」が話題になった。しかし新チームは打力にプラスして、池田、田上、両井、島野圭太(帝京大)ら機動力のある選手も揃っていた。
一方、多田らが「上の学年よりも」と考えたもう一つの理由には、近年稀にみる投手陣の充実もあった。岩崎がエースとして残っている上に、辰巳颯(上武大)、衣笠遼(近畿大)、高橋佑汰(大阪工業大)というMAX140kmオーバーの投手が複数いた。さらには、潜在能力の高さが評価され2020年のドラフトでプロへ進む内星龍(東北楽天イーグルス)、田上も控えていた。その後、彼らが3年生になってからの最高球速をみても、140km以上が6人、うち145km以上が4人。履正社で過去、これほど投手の陣容が整っていた年代はなかった。
「履正社史上最強」を裏付けるデータ
そしてもう一つ、「履正社史上最強」を示唆するデータがある。過去14年間、履正社の指導に携わってきた平嶋大輔トレーナーが明かす。
「2019年夏に全国優勝したチームは、平均身長が176・1cm、平均体重が78・7kgでした。どちらも当時の甲子園全出場校の中でトップの数字です。それに対して2020年夏のチームは、平均身長が176・9cm、平均体重は78・9kg。日本一チームを越えていました。彼らはトレーニングに対する理解力、取り組む姿勢も非の打ち所がなかった。本当にワクワクしかなかったですね。こういうチームが最初から全国優勝を狙えるチーム、いや、狙わなければいけないチームだと思っていました」
投打の素質に加え、フィジカル面でも前年度を上回る。このチームが2020年春、センバツの舞台でベールを脱ぐはずだった。
<#2へ続く>
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