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「就活を本気でやらせてください」サッカー日本代表・森下龍矢は“損保業界”を目指していた…明大生が内定を辞退してJリーガーになるまで
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byYudai Emmei
posted2023/08/04 11:01
8月3日発売のNumber1078号の取材で就活の秘話を語ってくれた名古屋グランパスの森下。プロサッカー選手も目指しながらの就活とはどのようなものだったのか
「当時、僕はサッカーと就活を切り離して考えていました。どちらも全力で取り組んで、それぞれで内定を勝ち取ろうと。だから磐田にも鳥栖にも、『今は就活を本気でやらせてください』と伝えていたんです。もちろん磐田には本当にお世話になったし、愛着も感じていました。ただ、サッカー選手になるんだったら新しい冒険がしたい、自分が全く知らない環境でプレーしたかったんです。だから、プロに行くなら鳥栖と決めました」
サガン鳥栖か、三井住友海上か
2019年6月1日、吉報は届いた。本命の三井住友海上から採用内定の連絡を受けた。サッカーと就活の二刀流、成功。ただし、体は1つ。当然、決断しなければならない。
サガン鳥栖か、三井住友海上か。
幼い頃からの夢だったプロサッカー選手になれる。でも、本当にそれでいいのか――。律儀で実直な好青年は、究極の選択に思い悩んだ。
「就活中、三井住友海上のサッカー部のみなさんに、すごくお世話になったんです。面接の練習につき合ってくださったり、たくさんアドバイスをいただいたり。きっと、人事部にも僕のことを推薦してくださったと思います。それなのに、もしも僕が内定を辞退してしまったら、会社にも、サッカー部のみなさんにも迷惑をかけてしまうことになる。だから、かなり悩みました」
三井住友海上の先輩に相談すると…
「突破力」を信じて、就職活動を勝ち抜いた男だ。迷ったら、即行動。お世話になった三井住友海上サッカー部の先輩たちに直接会って、自分の思いと迷いを正直に伝えた。
すると、保険のプロたちから意外な言葉が返ってきた。
「サッカー選手への道があるんだったら、行って来い! それは、俺らの夢でもあるんだから」
その1カ月後、サガン鳥栖のホームページにこう掲載された。