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「あれは一生、忘れることがない」電撃トレード→即活躍の石川慎吾がしみじみ明かした“縁”と仲間への思い…「苦労人」も笑い飛ばす3球団目の境地
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byChiba Lotte Marines
posted2023/07/22 11:04
ガッツ溢れる石川慎吾(右)のプレーは、マリーンズの選手たちにも刺激を与えている
カウント1ボールからライオンズのリリーフ右腕・森脇亮介のナックルカーブを躊躇なく振り抜くと、打球は中前で弾けた。鳴りやまぬ「シンゴ」コール。ドーム特有の反響も重なり、重厚な音は一塁ベース上の石川の耳から、心の奥底まで響いていった。代走が送られベンチに戻ってくると「ヤバい。有名選手になった気分。鳥肌が立った」と興奮気味に口にした。そして「マリーンズファンに打たせてもらった」と戻ってきた移籍後初ヒットのボールを手にしみじみと語り、感謝の言葉を並べた。
「思い出だらけ」原点の北海道で…
不思議なものだ。古巣ジャイアンツの本拠地で初ヒットを記録した翌日に向かった先は、北海道。石川をプロへと導いたファイターズとの2連戦が組まれていた。思えば初本塁打と初盗塁は北海道だ。7月8日のデーゲームでの出番は同点で迎えた7回2死一、三塁。マウンドには元同僚でお世話になった先輩の宮西尚生が立っていた。「走者を帰すことだけを考えていた」と、カウント2ボール、1ストライクからセンターへの勝ち越しタイムリーヒットを放った。しぶとく中前に弾き返した。絶対に勝ち越しを許すまいと左腕から放たれたキレのあるボールを魂で押し返したようなこの男らしい打球だった。これが試合を決める移籍後初打点。マリーンズは連勝を伸ばしていった。
「あれも嬉しかった。エスコンフィールドでプレーをしたいと思っていた。北海道は思い出だらけ。北海道のファンの皆様も温かかった」と振り返った。
スタンドのいたるところに石川慎吾のボードを手に持つファンがいた。着ているユニホームを見てみるとほとんどがファイターズだった。どれほど、彼がこの北の大地で愛され続けていたのかが、よくわかる光景が広がっていた。