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「あれは一生、忘れることがない」電撃トレード→即活躍の石川慎吾がしみじみ明かした“縁”と仲間への思い…「苦労人」も笑い飛ばす3球団目の境地
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byChiba Lotte Marines
posted2023/07/22 11:04
ガッツ溢れる石川慎吾(右)のプレーは、マリーンズの選手たちにも刺激を与えている
夢を語り合った仲間との再会
対戦こそしなかったがこの日のファイターズ先発は上沢直之。レフトを守っていたのは松本剛だった。同じ年のドラフトで指名された友だ。高卒で同じ年に入団した仲間にはもう一人、今シーズンからFAでホークスに移籍した近藤健介もいる。いつも4人で未来を語り合った。そして一軍で活躍する日を夢見て、二軍で汗を流した。笑い、泣いた。時は流れ、今。ユニホームは違っても、4人ともに一軍でプレーしている。その中で石川は3球団目のユニホームに袖を通し、上沢、松本の対戦チームの一員として同じ舞台にいた。
「高卒は4人。早いもので30歳になりました。よく一緒に遊びましたし練習をしました。もちろんプレーボールがかかったら敵になりますが、同志のような感覚があるし、みんなを尊敬している。(松本)剛も昨年、首位打者になりましたけど、剛ならやれるとずっと思っていました。本当に凄いと思っていた。そういう意味でもあの日、同じエスコンフィールドのグラウンドに立って、満員のファンの中で野球がやれているのは嬉しかった」
「北海道、大好きです」
石川は感慨深い表情で振り返る。初めて北の大地に誕生した新球場でプレーした一日は色々な想いが駆け巡る一日でもあった。そしてその日の最後を締めくくるかのようにヒーローインタビューに導かれた。マイクを渡されると、スタンドに語り掛けるようにこう口にした。
「この世界に導いてくれたのはファイターズ。北海道のファンの皆様には本当に離れた間も凄く応援していただきました。その声は凄くボクに届いていました。感謝の気持ちはすごく持っています。北海道、大好きです」
背番号「50」に、敵味方関係なく喝さいが降り注いだ。それは努力を続け、歯を食いしばり戦い続けている戦士への賛辞だった。