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「論ずるに値しないね」原辰徳に一刀両断された内海哲也は何を思ったのか? 厳しい言葉を浴び続けた“普通の投手”が巨人のエースになるまで
text by
内海哲也Tetsuya Utsumi
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/07/12 17:01
2010年10月、CSファイナルステージの中日戦で登板する内海哲也。同年は11勝(8敗)を挙げたものの、防御率は4.38と苦しんだ
17勝目を挙げたのは、10月12日に東京ドームで行われた阪神戦。9回を投げ切って1対1の同点で、原監督に「行くか?」と聞かれて「行きます」と即答しました。10回まで147球を投げて1点に抑えると、10回裏二死1、2塁から僕に打席が回ってきて、代打の高橋由伸さんがサヨナラ3ラン本塁打で試合を決めました。
「俺じゃないんだ…」転がり込んできた18勝目
次の登板は、10月22日にシーズン最終戦として行われた横浜戦です。中日の吉見一起が3日前に18勝目を挙げて、最多勝を獲るには並ぶ必要がありました。
でも、先発のマウンドに送られたのはルーキーの澤村拓一(現千葉ロッテマリーンズ)でした。セ・リーグの新人では江夏豊さん以来となる年間200イニング登板が懸かっていたからだと思います。僕にとってもタイトルが懸かっていたので、「俺じゃないんだ……」と感じました。
澤村は3回3分の1を投げて200イニング登板を達成。後を受けた山口鉄也がふたりを抑えて4回まで投げた後、僕は5回から3番手としてマウンドに上がりました。その時点では0対2でリードされていましたが、「このまま負けると(澤村)拓一に『内海さんに悪い』という気持ちを残したままCSに向かうことになる」と奮起し、5回無失点と好投することができました。ジャイアンツは8回に阿部慎之助さんのホームランで1点を返すと、9回に代打・長野久義が逆転サヨナラ満塁本塁打を放って劇的な勝利。僕に18勝目が転がり込んできました。
ヤクルトと対戦したCSのファーストステージでは、第2戦で先発の機会が回ってきました。初戦を任されたのは澤村で、「そういうことなんですね」と受け止めました。同時に、「でも、負けないよ」と。選手の使い方を決めるのは監督なので、「自分が頑張ればいい」と考えました。
ヤクルトとのCSでは6回1失点。初戦を落としていたので負けたら敗退という状況で、チームを勝利に導くことができました。残念ながらチームは次の日に敗れてファイナルステージには進めませんでしたが、僕にとっては飛躍の1年になりました。
<#3に続く>