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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イブラ様、引退セレモニーで「覚えておけ!」相手サポを毒舌で挑発…最後まで超ヤンチャな41歳が少し涙、ミランの後輩が号泣したワケ
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/06/27 17:00
2011年のイブラヒモビッチ。41歳となった彼がついに引退を決断した
「26人の息子たち」と呼ぶ若いチームメイトたちは、まだ独り立ちしたとはいえなかった。ズラタンを現役に踏みとどまらせた、唯一つの理由は“ミノと選んだ最後のクラブであるミランで、弟子たちの最後の成長を見届ける”という思いだったとしか思えない。 それは己のキャリアにおいてズラタンが初めて一人で考え、下した決断だった。
最終戦で目標だったCL出場権を手繰り寄せ、不可避の別れに23歳のMFサンドロ・トナーリは号泣した。ベテランFWオリビエ・ジルーでさえ「(5歳年上の)イブラに憧れていた。ともにプレーできたことを本当に誇りに思う」と涙に暮れた。
ミランには新しい時代のサイクルが開いた。
そう確信できたから、イブラはスパイクを脱ぐことを決めたのだろう。
俺自身の手で鍛え上げた“新しいズラタン”を残して俺は…
イブラヒモビッチの引退で、もはや日韓W杯でプレーした現役選手は4大リーグからいなくなった。
引退発表から10日余を過ぎ、イブラヒモビッチはあらためて別れのメッセージを投稿した。出生地マルメから始まった自らのサッカー人生をふり返った後、最後にこう記した。
《俺自身の手で鍛え上げた“新しいズラタン”たちを残して今、俺は去る。
全員が獅子のハートを持ち、瞳の中に煉獄の炎を宿し、不可能なことなど何もないと知る男たちだ。
ミノ、俺たち、やり遂げたぜ!
本当に素晴らしい旅路だった。
おまえがいなくて寂しいよ。》
イブラヒモビッチは戦いを終えた安堵とそこに友のいない悲しみを抱えて、勝敗を決する世界から解脱した。
引退発表から10日ほど過ぎ、彼の今後に関する話題が囁かれ始めている。
来年のEURO出場を目指すスウェーデン代表やクラブの内部変革を経たミランが、引退したばかりのイブラへチームマネージャーのポストをオファーするという類のものだが――全仏オープンをキリアン・エムバペと一緒に観戦する姿が話題になる一方で――本稿の締切時点で具体的なオファーはない。
ただ、寂しがり屋のズラタンのことだ。そのうち「チャオ」とニヤリ笑いながらサッカー界に戻ってくるだろう。
<#2「ベルルスコーニ編」につづく>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。