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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イブラ様、引退セレモニーで「覚えておけ!」相手サポを毒舌で挑発…最後まで超ヤンチャな41歳が少し涙、ミランの後輩が号泣したワケ
posted2023/06/27 17:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Takuya Sugiyama
ズラタン・イブラヒモビッチの選手生命は、とうの1年前に潰えていたのではないか。肉体はもう使い物にならず、精神力だけで最後のシーズンを戦っていたのではないか。
彼の現役引退から日が経つごとに、そんな思いにかられている。
「サッカーに『チャオ』と言うときが来た」
6月4日、2022-23年シーズンのセリエA最終節をもってイブラヒモビッチが引退した。
「サッカーに『チャオ』と言うときが来た」
イタリア語の「チャオ」は気軽な日常の挨拶と思われがちだが、特別に親しみを込めた末期の別れの際にも使われる。
4月下旬に痛めたふくらはぎ故障からの復帰はならなかった。最終節ベローナ戦では、ミランベンチの後ろに妻と座り、“GOD BYE”と掲げられたサン・シーロのクルバ・スッド(南側ゴール裏)を見上げた。
今季の出場試合はわずか4試合、144分のみ。3月18日のウディネーゼ戦でセリエA史上最年長ゴール記録(41歳166日)を樹立したが、準決勝まで進んだチャンピオンズリーグ12試合を含む今季52試合中45試合でベンチにも入れなかった。不惑を越えたイブラの両脚はボロボロの状態で、プロアスリートとして死に体だったことは論を俟たない。
だが、指揮官ステファノ・ピオリは精神的支柱としてズラタンを頼りにしていたし、息子ほど年の離れた“弟子たち”が誰より彼に戦いぶりを見せたがった。
「ゴールを決めるたびにズラタンから言われ続けた。『もっとだ、もっと点を取れ! ゲームを決めろ!』って」
最終戦で2得点したFWラファエウ・レオンはゴール後、“師匠”イブラの下へ駆け寄り、別れのハグを捧げた。
今季のミランはスクデット連覇こそ果たせなかったもののCLでベスト4に進出し、苦しんだ国内リーグも終盤戦で粘り強く4位に滑りこみ、来季CL大会への出場権も得た。
「イブラは、チームを彼抜きでも強豪と渡り合えるように育ててくれたのだ」(ピオリ監督)
ズラタン様を拝めたのが最高の思い出になるんだ、覚えておけ
ズラタン師匠の流儀は野武士のように荒っぽい。試合後の引退セレモニーでも憎まれ口を叩いた。ブーイングの指笛を浴びせたベローナ・サポーターに「吹けよ、好きなだけやれ! お前らにとってズラタン様を拝めたこの試合が今シーズン最高の思い出になるんだ、覚えておけよ」と煽り、7万大観衆をどっと沸かせた。